第5章 水柱
「美味しー!!」
琴音のそんな声で、はっと我に返る村田。
「うふふふ、やっぱり任務後は甘味に限りますなぁ、村田殿」
「……左様でございますなぁ、夜月殿」
「もう一本まいろうか、村田殿」
「貴殿の奢りとあらば。夜月殿」
「んー……、まあよかろう!おばちゃーん、お団子追加ねー!三色と、きなこー!二本ずつねー!」
「一本じゃねえのかよ!」
「まあまあ、堅いこと言いなさんな」
「太っても知らねぇぞ」
「こんな生活してて太れるもんかい。私達成長期だから大丈夫だよーん」
串についたあんこをペロッと舐める琴音。
「例え鬼を倒しても……」
「ん?」
「甘味のない世界になったら、私は生きていけないな」
「お前、本当に甘味が好きだな」
「うん!同期の中で村田が一番甘味好きだから、たまにこうして一緒に食べに来れて嬉しいよ」
「そりゃどうも」
そこへ運ばれてくる追加の団子。
「きゃはっ!」
「嬉しそうだな」
「幸せー!!」
団子を頬張りながら楽しそうに笑う琴音を見て、純粋に可愛いなと思う。
「明日死ぬかもしれないんだから、好きなもの食べとかないとね」
「縁起悪いこと言うなよ」
「あはは」
しかし、村田は戦闘になると彼女がめっぽう強いことを知っている。
かつて、『誰も助けられなかった』と大粒の涙を流していた琴音。今も、誰一人死なすまいと、毎回命を燃やして戦っている。
「………、…………るよ」
「ん?何か言った?村田」
「いや、何も」
「??? 変なの」
首をかしげる琴音。
村田を気にしつつも団子をまた頬張る。
『お前は、俺が守ってやるよ』
村田のその小さな呟きは、彼女の耳に届くことはなかった。階級もまだてんで低くて、なんなら彼女より圧倒的に弱っちい自分に、そんなことはとてもじゃないが言えない。
俺も強くなる
だから、お前は死ぬんじゃないぞ………
その思いも口に出来ない村田だったが、強くなると心に強く決意をして、甘い団子を口に入れた。