第34章 己のすべきこと
その時、城の最下層では上弦の壱、黒死牟との熾烈極める戦いが繰り広げられていた。
無一郎、玄弥は瀕死、鬼殺隊の中でも最強の二人である悲鳴嶼と不死川も多彩な技を使う黒死牟に苦戦していた。
愈史郎の眼で戦況を見守り、指示を出していた産屋敷兄妹が焦り始めた。
「輝利哉様、上弦の壱の元へ他の柱を向かわせますか?」
「冨岡義勇、竈門炭治郎の二人は行けます」
「いや、義勇と炭治郎はそのまま無惨の元へ」
「あと、夜月琴音も行けます」
「いや、琴音は駄目だ」
「何故ですか。相手は上弦最高位ですよ?一人でも多くの柱を集めたほうが……」
「彼女をまだ失うわけにはいかない」
「それは他の柱も同様でしょう」
「違うんだ。彼女はその存在そのものが隊の存亡に大きく関わる。他の柱とは違う形で」
「……よくわかりません」
「琴音は無惨と戦い始めるまで、決して殺されてはならない」
輝利哉は己の動揺を抑え込み、堂々とした口調で話す。とても当主の座について間もない子どもとは思えない。
「上弦の壱は、行冥と実弥、無一郎と玄弥の四人が必ず倒す」
まっすぐ前を見据えて、そう言い切った。
義勇と炭治郎は無惨の元へとひた走る。
琴音も隊士を助けながら、別の道から無惨を探して走った。
彼女が助けた隊士たちは、強き少女の想いを受け取り、希望を持ってまた起き上がる。
無惨という巨大な敵に比べれば、鬼殺隊士などちっぽけな存在でしかない。
それでも、その小さなパーツ同士が繋がり合って、次第に大きな物になろうとしていた。