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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第34章 己のすべきこと


「ちょっとちょっと!縫ってあげるから待ちなさい!」
「いい。焼く」
「馬鹿!そんなことしたら痛みでまた気絶するっての!」
「しない」
「もう終わるから、ちょっと待ってて」
「お前は炭治郎を甲斐甲斐しく世話していればいい」

面倒くさい感じで拗ねている義勇。
琴音も少し呆れながら炭治郎を手早く治療していった。


炭治郎の肩を縫い終わって、包帯を巻く。

「冨岡、お待たせ」
「………」

義勇の方へ体を向けるが、義勇は刀を熱したままぷいっとそっぽを向いている。
琴音は苦笑いしながら義勇の体を見ていく。その傷の多さに顔を顰めた。

「とりあえず右肩だね」

琴音は義勇の右側に回り込んで縫合の準備をする。拗ねている義勇も一度刀を置いた。
消毒液をかけられて、表情は変えないものの、義勇の体が痛みで僅かに動いた。

「……麻酔、するね」
「いらん」
「駄目。動かれても困る。傷口ガタガタだし縫いにくい」

肩を布で拭かれ、何か所か局所麻酔の注射を打たれた。

「麻酔の効果はすぐ消える。戦闘に支障はないよ。大丈夫」

肩に布を当てて出血を抑えながら琴音がそう言った。麻酔が効くまでの間も、他の傷口の処置をしたり、炭治郎の様子を見ていたりと動きに無駄がない。

次第に肩の痛みがなくなってきた。
義勇がちらっと右肩に目を向けると「よし、いいかな」と琴音が言って、縫合を始める。

「痛くない?」
「ああ」
「すぐ終わるから、頑張って」

縫われている間、義勇はすぐ近くにある琴音の顔をじっと見ていた。真剣な目をして手早く縫っている。外科は専門じゃないと言っていたが、これだけ出来れば十分だろうと思った。

「さっきはごめん」
「?」
「私、冨岡の言うこと聞かなかった」
「………」
「私がちゃんと戦えていたら、二人共ここまで怪我しなかったかもしれない。本当にごめん」
「仕方ないこともある」
「でも」
「反省しろ。繰り返すな」
「……はい」

縫合が終わり、パチンと糸が切られる音がした。

義勇は麻酔で痺れる右腕で琴音の頭を抱き寄せた。


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