第34章 己のすべきこと
琴音は義勇たちのところへ辿り着いた。
義勇は折れた刀を支えにして蹲り、炭治郎は伏して倒れていた。どちらも意識はない。
急いで二人に駆け寄る。
「冨岡!しっかり!!」
義勇の身体を支えて、寝かせる。呼吸と心音を確認した。
すぐさま炭治郎の体の向きも変えて仰向けにし、同じく生存の確認をする。
どちらも重症だが、頭部からの出血があること、及び体の小ささから、炭治郎の治療を先にすることにした。
頭の下に羽織を入れて高くし、服を脱がせていく。傷を見ながら素早く状況を確認した。
頭と左上腕の傷が深い。
すぐに縫合を開始した。気絶していることをいいことに、麻酔はなし。起きないでね……と祈りながら手早く縫って止血をしていく。
炭治郎の治療をしていると、隣に寝かせた義勇が呻いて目を覚ました。
「冨岡っ!!」
「夜月……?……っ!」
「良かった、気付いたね」
「大丈夫…か……?」
「冨岡より余程大丈夫よ」
琴音は炭治郎から目を離さずに義勇と話す。
早くも頭の縫合は終わって包帯を巻いている。
「冨岡、出血ヶ所の確認と止血。自分で出来る?」
「ああ」
義勇はよろりと身体を起こして自分で服を脱ぐ。
琴音は炭治郎の腕の縫合を始めた。
義勇は胸ポケットから巾着を引っ張り出した。琴音に内布を付けてもらってしっかりと補強された巾着には、各種様々な薬が入っている。
その中から止血剤を出して傷に塗っていった。
炭治郎が気絶しながら呻いた。
「ごめんね、痛いかな。縫合が終わったら、痛み止めの止血剤塗ってあげるからね。頑張れ」
優しく声をかけながら治療する琴音に、若干苛つく義勇。その雰囲気に気が付いた琴音が声をかけた。
「不貞腐れないでよ」
「……別に」
「炭治郎くんの方が重症だったのよ。頭だし、子どもだし。日の呼吸を使えるこの子を失うわけにはいかない。もちろん水柱もだけど」
「わかっている」
義勇は大方の止血を終えると、火を起こし始めた。
「止血しても血が止まらない。焼く」
そう言って刀を熱し始めた。
俺だって傷が深いんだ、と言っているようだった。