第34章 己のすべきこと
琴音の頭は冷静になった。
義勇と炭治郎のことが気がかりだが、取り急ぎ近場の隊士の救出に向かう。
その間に義勇たちが死んだら一生後悔することになると思ったが、目の前の命も一つの命。義勇たちの命と重みは変わらない。
救える命を救って、再度義勇達の救援に向かう。
琴音は覚悟を持って、その判断をした。
大丈夫、彼らは強い。
そう言い聞かせた。
腹部を押さえて走りながら、琴音は先程までの自分の行動を反省する。
怒りで全てを見失ってしまった。
……義勇さん、ごめんね。どうか死なないで
そう祈りながら、隊士に襲いかかる鬼の群れをなぎ倒した。
負傷した隊士が何人か転がっていたので、治療していく。「天女だ」「紅衣の天女だ」と声が上がる。
「負傷者集めて!まとめて治療する!」
身体が動く者達が、負傷者を運んでくる。
琴音は助かりそうな者から優先的に治療をしていった。いつもなら逆で治療をするが、この場においては命の選別も必要になるため苦しい選択も迫られる。
助からない者には薬を使えない。今後の長い戦闘を考えると、鎮痛剤を使って楽にしてやることも出来ない。
心を鬼にする。
それでも治療の合間にしっかりと手を握ってやり、「よく頑張ったね。立派だったよ」と笑顔を向けてやった。
治療が落ち着くと、動ける隊士達にこの場を任せて義勇たちの所へ向かった。
すると、その途中で鴉が叫んだ。
「カァァァーー!!炭治郎、義勇!上弦ノ参、撃破!!疲労困憊ニヨリ意識保テズ、失神!!」
琴音は涙を堪えながら走った。
良かった
良かった
二人とも生きてる
凄いね
頑張ったね
ありがとう ありがとう……
本当はこの手で杏寿郎の仇を討ちたかった。
でも琴音は、己のやるべきこと、己にしか出来ないことを優先させた。
杏寿郎さん
あなたの想いは、ちゃんと炭治郎くんに繋がったよ
だから
安心してね
あなたは皆の心の中で、ずっと生きていくからね
琴音は、おそらく戦闘でボロボロになっているであろう二人の元へ急いだ。