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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第34章 己のすべきこと


義勇も炭治郎も、琴音に加勢が出来ずにいた。
以前義勇が指摘した、この技の「速すぎて見えない為、仲間との共闘に不向き」という弱点の為だ。

「夜月!一人で戦うな!死ぬぞ!連携して交互に技を出すんだ!!」

義勇は叫ぶが、琴音はまた一人で向かっていく。


義勇の声が聞こえないのか、聞きたくないのか。それはわからない。

仕方なく、義勇と炭治郎は呼吸を使って琴音が戦っている間を回復の時間に充てた。彼女の戦いを見ながら、勝機を探る。


「お前は夜月というのか。下の名は」
「…………」
「杏寿郎との関係は?」
「…………」
「おい、人生の最後なんだ喋ろうぜ」
「……死ね」
 

今、俺の目の前にいるのは誰だ


義勇は思った。
今までいつも自分の前で笑顔で居た琴音の欠片もない。

猗窩座の拳が琴音の肩口をかすめ、鮮血が飛び散る。しかし、痛みも何も感じていないように技を出し続ける琴音。

彼女の中での杏寿郎の存在は、やはりとてつもなく大きかった。仇を前にして、ここまで心が振り切れてしまう程なのだ。それを痛感した。


大技の連続で、息が上がってきた琴音。それを見て笑みを浮かべる猗窩座。

「人間とは悲しいものだな」
「……はぁ、……はぁ」
「だが、女でありながらここまで強くなるとは、正に奇跡だ、夜月」
「…………」

「さて。今更だが、俺は女とは戦わない」
「……?どういうことだ」
「ははは、ようやく口を利いたか。言葉通りの意味だ」
「…………」
「お前が見たことのない面白い技を使ってきたから相手をしていたが、俺は女は殺さないし食わない」

義勇も炭治郎も眉をしかめた。
こいつにそんな騎士道のようなものがあるのだろうか。

「何故だ」
「さあな。俺にもよくわからない」
「ふざけるな!お前の信条なんて知らない!私はお前と戦う」

琴音がまたフッと姿を消し、飛び込んだ。
猗窩座は彼女の刀を首前で十字にした両腕で受け止めた。
片腕は斬り落とされて、もう片腕の三分の二程が斬られたところで刀が止まった。

「――…っ!」
「とてつもなく速いが、やはり女。力は無いな。お前との戦闘はここまでだ」

そう言うと猗窩座は琴音を強く蹴飛ばした。

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