第34章 己のすべきこと
……この気配っ!!
琴音は爆音を響かせながら戦っている現場へ走る。
……間違いない!相手は上弦だっ!!
舞い上がる粉塵の中に飛び込むと、見慣れた羽織。緑の市松模様の羽織へ向かって出せれている攻撃を、飛び込みながら弾いた。
「冨岡っ!!炭治郎くん!!」
「夜月!!」
「琴音さん!!」
戦っていたのは義勇と炭治郎。
二人とも重症ではないが手傷を負っている。
そして、琴音は敵を見た。
冷静だった琴音の呼吸が、大きく乱れた。
「上弦の………参っ!!!」
義勇はハッとした。
「落ち着け!夜月!!」
すぐさま琴音に声をかけるが、その声は届かなかった。
「お前が……、お前が杏寿郎さんのっ!!」
琴音を纏う気配が怒りで取り巻かれた。
「やっと会えた。私はずっとお前を探してた。殺してやる」
「夜月!駄目だ!!冷静になれ!!」
「何だお前は」
「煩い」
「杏寿郎の女か」
「煩い。死ね」
義勇が聞いたこともない表情と言葉。
琴音は怒りと憎しみに満ちていた。
「混合の呼吸、
―――“disappear(消滅)”!!」
琴音が呟くと、彼女の姿がフッと消えた。速すぎて義勇と炭治郎は目で追うことができない。
彼女は三連撃でなくとも技を出せるようになっていた。義勇に言われた通り鍛錬をしてきたのだとわかる。
しかしそれでも猗窩座は彼女の闘気に反応して技を躱し、首の切断を免れた。
「速いな、お前。名は?先程何と呼ばれていたか……」
琴音は猗窩座の問には答えずにまた技を出す。
何度も技がぶつかり合い、轟音が響く。
それが激しく繰り返され、猗窩座が琴音の手を掴んだ。猗窩座の首には半分程琴音の刀が入っている。
腕を折られる……!
そう判断した琴音は日輪刀から手を離し、腰元から小刀を取り出して猗窩座の腕を切断した。
離れる際に日輪刀を回収して小刀も収める。
彼女の隠し武器の存在に義勇も驚いた。小刀など見たことがなかったから。どうやら日輪刀と同じ素材で出来ているようだ。