第33章 戦いへ
「ご飯、ご馳走さまでした」
「ああ」
「俺はこれで失礼します。明日は稽古をお願いしてもいいですか?」
「……泊まっていけ」
「え、ですが、」
「客間は空いている」
「ご迷惑では」
「別にいい」
「でも……、琴音さんがいるのに」
「月役中は抱けない。お前がいても問題ない」
無表情のまま義勇がそう言うと、炭治郎が頬を染めた。そこへすぐさま開かれる扉。
「ちょっと!!な、なんてこと言ってんのよ!冨岡っ!!」
「……?」
「いや、キョトンとしないでくれる?はぁ、ごめんね、炭治郎くん。冨岡が変なこと言って。気にしないで」
「は、はい」
琴音は頭を抱えながら炭治郎に謝る。炭治郎は赤くなって小さくなっていた。
「俺、お邪魔していいのですか?」
「もちろんよ。……って私の家じゃないけど」
「助かります。宿を探そうと思っていたので」
「庭に干してあるお布団、自分で入れてね。お洗濯も自由にどうぞ」
「はい」
「冨岡、私、出かけるね」
「ああ」
「いってきます」
「遅くなるなよ」
「はーい」
琴音が家を出ると、義勇は炭治郎に稽古をつけた。
休みではあるものの、どのみち鍛錬をするつもりだった。人と関わることが苦手な義勇だが、比較的交流が深い炭治郎は、その点において稽古相手として丁度良かった。
そして義勇は、この短期間で驚く程に腕を上げている炭治郎に驚いた。
体はまだ小さいが、体力もある。
自分がこのくらいの歳の頃、こんなにも強かっただろうかと思った。
……こいつといい、琴音といい、水を二番目の呼吸として使う者はとんでもない奴が多いな……
義勇は感心しながら、炭治郎の技の荒いところや動きの無駄を指摘して修正していった。
日が暮れて、炭治郎の体力が尽き、道場に転がった時に稽古は終わった。
「ありがとう……ございました……。げほっ、おえっ」
「ああ」
義勇は平然とした顔で稽古場を出て自室へ行く。
戸を開けて外を見た。もう暗い。まだ帰ってこない琴音を思ってため息をつく。
……全く、夜更けまでうろうろと。困った娘だ
仕方なく炭治郎と二人で夕餉を食べた。