第33章 戦いへ
「俺が運びます」
「いいよ」
「いえ、俺が。台所はあちらですね。匂いでわかります」
「炭治郎くん」
「大丈夫ですから……ね?」
炭治郎はニコリと笑うと、軽く頷いた。
彼はわかっているようだ。
「ありがとう。じゃあお願いするね」
「はい」
義勇には二人の会話がよくわからない。
炭治郎は食器を持って台所に行き、琴音もそそくさと部屋を出ていった。
一人ぽつんと部屋に残された義勇は、何かあったのかと心配して琴音の部屋へ行く。近付くと中から「ちょ、ちょっと今入らないで!!」と琴音の声がした。
「どうした。身体が痛いのか」
「大丈夫!とにかく入らないで!」
「…………」
部屋に入れてもらえずに佇んでいると、慌てて炭治郎が声をかけた。
「義勇さん、お部屋行きましょ」
「………ああ」
炭治郎に引きずられるように自室へと戻る。
「……ふぅ」
「あいつ、どうかしたのか」
「いや、……えっと、」
「なんだ」
「……琴音さんから血の匂いがしたので」
「血?!」
義勇はぎょっとした。
昨晩無理をさせたから内部損傷でもしたのかと焦る。洗濯もしていたし元気そうに見えたのだが、確かに腹も腰も痛いと言っていた。
「あ、だから、その……女性の」
炭治郎が言いにくそうにもごもごとし始めた。
それを見てようやく合点がいった義勇。安心したように息を吐いた。
「月役か」
「おそらく」
「……よくわかったな」
「俺、妹いますから」
自分とて姉がいた。琴音とも付き合っているのだし、女の事情はわかっている。
でも、炭治郎の方が余程しっかりしている気がした。すぐに気付いてあの対応。長男恐るべしと思う。
琴音の周期的にやや早い気もするが、今月はいろいろと身体を弄っていたので乱れたのかもしれないと義勇は思った。