第32章 任務完了※
義勇の家に帰ってきたときはもうだいぶ暗くなっていた。
無人だった家はひんやりと寒く、琴音は風呂を沸かして先に義勇を入れる。
そして彼と入れ代わりに風呂に入った。はずなのだが、何故か再び浴室に現れる義勇。
「なっ、なんで!?」
身体を洗っていた琴音は驚いて声を上げ、顔を赤くして湯船に飛び込んだ。腕で身体を隠す。
「共に入りたくなった」
しれっとそう言って湯船に入ってくる義勇。
琴音はあわあわと湯船の端へと逃げるが、義勇に捕まって正面から抱きしめられる。
「何故逃げる」
「や……、だって」
「温かい。今日はずっと外にいたから寒かったな」
「う…うん」
琴音の大量採血後、ずっと我慢をしてきた義勇。久しぶりに琴音と素肌を寄せ合った。戸惑う琴音の肩口に義勇の頭が乗る。
「痩せたな」
「そうかな」
「痩せた」
「…………」
「だが、血を渡したことでお前が請け負っていた大きな仕事は完了したのだろう」
「まあ、そうだね」
「任務完了だ」
義勇は以前より幾分細くなった琴音の身体をまじまじと見つめた。
「あ、あんまり見ないで」
「何故だ。痩せても綺麗なのは変わらない。むしろ……」
義勇は煽るように琴音の耳元で囁く。
「色気が増した」
義勇は琴音に口付けをした。密着した肌の温もりを感じながら、夢中で口を吸う。琴音が逃げないように背中に回していた義勇の腕が彼女の首元に絡み、口付けは深いものになっていく。
舌を絡めた口付け。琴音の頭も次第にとろけていく。
湯船の水音の他に、義勇の舌がたてる音が聞こえ、唇を離した義勇は首元へと口付けを移動させていく。
「きゃっ…、あん…っ……」
身をよじる琴音。離れようとする彼女の身体を逃すまいと抱きしめる義勇。無数の口付けを落としながら、手を胸へと伸ばした。