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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第31章 ご挨拶


「義勇さんはどんな子だったんですか?」

面白がって琴音が聞く。
義勇が睨んできたがお構いなしだ。

「蔦子ちゃんの後をずっと追いかけていたねぇ」
「………」
「あはは」
「縁日ではよく迷子になって泣いていたわ」
「…………」
「へぇ、案外泣き虫でしたか」
「小さい頃はしょっちゅう泣いてたわ。犬が怖くて泣いてたし、転んで泣いたり、草履が脱げただけでも泣いてたわね」
「それは…なかなか重度ですね」
「でも笑うと本当に可愛らしかったわ」
「……………」

義勇は湯呑を握りしめながら無言で俯いている。控え目に言って地獄だ。

「年の近い子が村にいなかったから、年上の子とばかり遊んでたのよね。だからとっても甘えん坊さんだったわ」
「なるほどー」
「それにこの顔立ちでしょ。もうお姉さんたちがよってたかってちやほやしてたのよ」
「甘えん坊が止まりませんね」

幼少期の様子を次々に暴露されて義勇は生きた心地がしなかった。
そこへ助け舟。

「母さん、駄目だよ。義勇の恋人の前でそんな事言っちゃ」

赤子を抱いた一人の青年がおばちゃんに声をかけた。
義勇は彼の顔を見て、あ、と小さく声を上げた。

「悪いな、義勇。母さんがぺらぺらと」
「いや」
「久しぶりだな」
「ああ」
「大きくなったな、義勇」

そのやり取りで義勇の幼なじみだと琴音にもわかった。年は義勇よりいくつか上のようだ。

「あ、これ、俺の娘」
「いくつだ」
「二つ。可愛いだろ。じゃ、またな」

そう言って青年はおばちゃんを連れて席を離れた。
離れる際に琴音に会釈をする青年。琴音もぺこっと頭を下げた。
気を利かせてもらい、義勇はホッとしたように息を吐いた。


「泣き虫で甘えん坊の義勇ちゃん……か」

琴音が笑いながら呟くと、義勇はやや拗ねたように琴音を見た。

「幼い頃だ」
「今と違いすぎて像が結びつかないや」
「結び付けなくていい」

甘えん坊の片鱗は今でもあるけどね、と琴音は思う。義勇が家庭の中でも、子ども集団の中でもバリバリの末っ子だったことがわかった。


これ以上危険人物に会ってはまずいと思ったのか、義勇は会計をして店を出た。
幼馴染みの青年には軽く手を上げて挨拶をする。

琴音の知らない義勇の一面が見られて、面白く思った。

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