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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第31章 ご挨拶


琴音の話は続く。


蔦子さん

子どもの頃、私はあなたにとてつもなく失礼な態度をとったのではないでしょうか
記憶にないのが心苦しいところではございますが、非礼をお詫びいたします

お空でうちのお兄ちゃんと仲良くされていることと思います
私も今、義勇さんと仲良くさせていただいております

あなたの愛した義勇さんは、今も変わらずあなたの事が大好きです
あなたの服を身に付けて、立派に戦う最強の隊士になりました

ただ、あなたや親友を失った事で心を閉ざしてしまったのか、表情が乏しく大変無口になりました
そのおかげで誤解を招くことが多く、よく人と衝突しております

でも、時折見せる笑顔はとても綺麗です
それはまるで奇跡のような笑顔で、太陽の光みたいに私の心を温めてくれます

きっとあの笑顔は、蔦子さんやご両親が義勇さんに向けていたものなのでしょう


私はそんな義勇さんが大好きです

ご両親と一緒に、義勇さんをお守りください
お願いいたします



琴音がゆっくりと目を開けると、義勇がじっと見ていた。

「熱心に拝んでいたな」
「私もご挨拶していたの」
「親にか」
「うん。蔦子さんにも」
「そうか」

義勇は少し嬉しそうな表情を見せた。

「実家に寄る?」
「別にいい。行っても何もない」

義勇は立ち上がり、琴音も隣に立つ。

「飯でも食っていくか」
「よく行ってたお店とかあるの?」
「そうだな……」

義勇は少し考え込んだ。

「蕎麦、うどん、定食屋、行きたいところはあるか」

いくつか店を知っているようだ。
外食もよくしていたのかと思う。

「義勇さんは鮭大根でしょ」
「ならば定食屋か」
「行こっか」
「ああ」

墓に向かって琴音は頭を下げた。
義勇もお辞儀をする。

二人は連れ立って歩いていく。
義勇は琴音の手を繋がない。
不思議に思っていると、それに気付いたのか義勇が琴音をちらりと見てボソッと言う。

「地元、だから」

それを聞いてクスッと笑う琴音。知り合いに会ってしまうかもしれないということだろう。

「むしろ繋いでやりたいわ」
「……よせ」

意地悪をしてそう言うと、義勇はぷいとそっぽを向いてしまった。


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