第31章 ご挨拶
翌日、義勇は柱稽古をし、琴音は煉獄家へと出かけていった。身体が鈍っているので、煉獄家で軽く鍛錬をした。
日中をそれぞれの時間に使い、鍛錬終わりでまた二人で過ごす。
義勇は二日間の休みを申請し、次の日は予定通り墓参りの決行となった。
墓参り当日。
朝起きると、天気も良く気持ちの良い日だった。
「琴音、起きろ」
まだ夢の中の琴音を揺り起こす。
彼女の顔色も良さそうだ。
「んんー……」
「墓参り、行くぞ」
「………………ん…」
なかなか起きない琴音にため息を付きながら、義勇は先に起きて身支度を始めた。
義勇が着替え終わった頃、のそりと琴音が起きてきた。
「おはよう…ございます……」
「身体、どうだ」
「いい天気だねぇ」
まだ寝ぼけているのだろう。会話が噛み合わない。琴音は手拭いを持ってとことこと洗面所へ歩いていった。
顔を洗って少し覚醒した琴音は、テキパキと身支度を始めて軽く化粧をした。
琴音は髪を下ろしたまま義勇の部屋へ来て、既に結ばれている彼の髪を下ろす。
不思議そうに琴音の方を見る義勇に笑いかけた。
「やってあげる」
琴音は櫛を使って義勇の髪を梳く。普段着全く手入れをされていない義勇の髪は、あちこち絡まっていて何度も引っかかった。
その度に手を止めて痛くないように絡まりを解き、また櫛で梳いていく。
問題なく櫛が通るようになると、義勇のごわついた髪も多少はさらりとした。
『たまには梳かしなさいな』
昔、姉に言われたことを思い出して、義勇は目を細めた。大人しく髪を弄られている。
いつもより幾分落ち着いた髪を纏めて、琴音がきゅっと縛った。癖の強い髪も、綺麗に纏められている。
「うん!男前!元々だけどね」
そう言って笑う琴音。
「交代だ」
義勇は琴音を座らせて、彼女の髪を丁寧に櫛で梳かす。綺麗に纏めて高い位置で結んでやった。
「ありがとう」
振り向いて笑顔を見せる琴音。互いに微笑み合った。
「行くか」
「うん」
二人は手を繋いで家を出発した。