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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第30章 好きと苦手


義勇はしのぶに頼み込む。

「泊めて欲しい」
「…………」
「頼む」
「宿屋じゃありませんが」
「夜月のそばにいさせてくれ」

しのぶは軽くため息をつき、琴音の部屋を教えた。

「もし夜中に容態が急変したら教えて下さい」
「承知。感謝する」

義勇が部屋を出ていくと、しのぶは彼が去っていった方を見ながら口元に手を当ててくすっと笑う。

「人は変わるものですねぇ。驚きです」

そう呟くとくるりと向きを変えて机に向かい、仕事を再開させた。



義勇は琴音のところへ向かった。
琴音は和室で寝ていた。顔は白く、生気はない。腕には点滴がつけられていた。

隣に胡座をかいて座る。
手を伸ばして彼女の髪をそっと撫でてやった。

「ここまでよく頑張ったな」

小さな声で話しかけた。

「胡蝶が褒めていた」

返事はないが、珍しく一人で喋る義勇。

「ゆっくり休め。そばにいる」

気のせいか、眠る琴音が僅かに微笑んだ気がした。


少しするとすみが来て、義勇用の布団を準備してくれた。晩御飯もご馳走になってしまって恐縮したが、ありがたく受けることにした。

夜になり、布団を隣にくっつけて敷いた。

自分の布団に入って手を伸ばし、彼女の手に指を絡める。ひんやりと冷たいあまりにも細いその指に、本当に生きているのかと不安になって呼吸を確かめてしまった。

結局この日、義勇が面会に来ている時間の中で琴音が目を覚ますことはなかった。
それでもやはり会いにきて良かったと義勇は思った。それこそ離れていたら心配が勝ち過ぎて一睡もできなかっただろう。


「Get well soon 琴音 ……」

祈るように呼びかけた。


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