• テキストサイズ

言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第30章 好きと苦手


生理から二週間程経った日の朝、琴音が言った。

「総仕上げに行ってきます」
「総仕上げ?」
「最後の採血。沢山血ぃ採るから、今日は帰れない。ごめん」
「…………」

「今まで入れた毒で、体内で抗体を作ってきた。血清を作る為の血を渡してくる」

「……危険なことなのか?」
「ううん、そんなことないよ。ただ通常よりたっぷりとるから、今日明日くらいは立てないと思う」
「……………」

義勇は心配そうな顔をした。

「鍛錬終りで、見舞いに行く」
「来てもらっても私、相手できないよ?」
「いい。行く」
「でも……」
「帰れないなら、俺が行く。泊めてもらう」
「え!」
「そばにいたい」

義勇は琴音を抱きしめた。

「……甘えん坊さん」
「…………」

強く抱きしめられて、義勇に譲る気はないのだとわかる。

「病室に泊まれるかはわかんないよ?蝶屋敷も慌ただしくしてる。しのぶちゃんに無理言っちゃ駄目だよ?」

義勇は琴音を抱きしめたま、小さく頷いた。


「じゃあ行ってきます」
「頑張れ」
「はい」

軽く口付けを交わすと、琴音は元気に家を出ていった。
義勇は柱稽古が始まるまで、黙々と鍛錬をした。

動いていないと、不安になってしまうから。



夕方、稽古終わりで蝶屋敷へ向かう義勇。手土産を持っていた。

しのぶがいたので、診察室で面会をする。

「まあ、冨岡さんが人に気を遣うだなんて!明日は季節外れの嵐でも来るのでしょうか」
「……………」
「お土産、ありがたく頂戴します」
「ああ」

「夜月は」
「寝ています」
「容態」
「なんとか生きています」
「…………」
「ギリギリまで取らせてもらいました」
「夜月が、それを望んでいた」
「はい。このために琴音は頑張った。ここまで文字通り死ぬほど辛かったと思います。でも本当によく頑張りました」
「…………」
「あの子は頑張り屋さんです」
「ああ」

「私も負けてはいられません」

しのぶが美しく微笑んだ。

/ 419ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp