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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第29章 そっと、ずっと


義勇は客間で座って琴音を待つ。

彼女は来てくれるのだろうか。いや、薬がある以上必ず来る。だが、どう話せばいい。どう向き合えば……

そんなことを考えながら待った。
時間としたら十数分だったのだろうが、義勇にとっては永遠ともとれる長い時間に感じられた。


しばらくすると、すっと戸が開いた。

「失礼します」の一言のみを口にして、琴音は無言で入ってきて義勇の目の前に座った。

琴音はじっと義勇を見つめた。
何日か振りにみるその姿。顔色は悪くない。刺すような彼女からの視線に、義勇は固まる。

しかし、黙っていてはいけないのだと思い直して義勇は口を開く。

「悪かった」

ぺこりと頭を下げた。

「…………」
「…………」

琴音は黙ったまま静かに義勇を見つめる。義勇も何を言っていいのかわからずに、頭を下げたまま黙ってしまう。

「…………」
「…………」

部屋に沈黙が続く。

「夜月、何か言ってくれ」
「…………」
「怒ってるんだよな」
「…………」
「…………」
「…………」

義勇は冷や汗をだらだらと流した。
琴音がめちゃめちゃ怒っているのだと確信した。

「説明を」
「………え」
「説明をしていただきたいと思います」

義勇は驚いて顔を上げる。

「宇随さんから、お話があるのだと聞いております。私に話しにきたのでしょう。違うのですか。それとも薬のお届けだけですか。それならば薬を置いてお引取りください。ありがとうございました」

とんでもなく冷たい空気を漂わせる琴音。その声色と表情に義勇はゾッとする。

「もちろん話しに来た。説明させてくれ」
「どうぞ」

義勇は拙い言葉を苦心して繋ぎ、状況を説明した。未だかつてないくらいに、自分でも驚くほどに必死だった。それだけこの娘を手放したくないと思っているのだと実感した。


「……つまり、不意打ちをくらった、と」
「そうだ」
「自分に非はないと?」
「ある。全ては俺の未熟さが招いたことだ」
「…………」
「お前を傷付けたことを、心底すまないと思っている」

義勇はしょんぼりとして俯いた。
琴音は、そんな義勇をまだ姿勢を崩さないままに見つめている。

「事情はわかりました」

無表情のままにそう声をかけた。

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