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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第29章 そっと、ずっと


義勇は、綺麗な川の近くに小屋を見つけた。

暖かな光が漏れており、家の周りには薬草らしきものが多数干されている。そっと近付いて気配を探るが、琴音の気配はない。


しばし入り口付近で佇んでいると、家の中から声がした。

「迷うなら動け。決断は早くしろ。救える命も救えんぞ」

義勇ははっとした。そしてその言葉で、ここが探していた家であると確信を得る。琴音の思考そのものである言葉だったからだ。

「夜分失礼します」と丁寧に声をかけ、戸を開いた。


「入れ」
「お邪魔します」
「座れ」

手短な言葉で促されて、義勇は火鉢の側に座った。
目の前には、白衣を着た六十歳くらいの男。

「琴音ならここにはいないぞ」
「そうですか」

義勇は、ため息をついた。
ここでもなかった。一体どこへ消えたんだ。

義勇は膝の上の手を握りしめた。

「お前は水柱か」
「はい」
「琴音の、相手か」
「……はい」

少し迷ったが、義勇は肯定した。
果たして今の自分は『琴音の相手』なのだろうか……


「何があった。話せ」

やや不機嫌そうな男はじっと義勇を見つめた。
彼女の行き先に手がかりのなくなってしまった義勇は、全てを話すことにした。


「……お前の説明はわかりにくい」
「…………」
「言葉が足らないんだな」
「……申し訳ない」

一通り話を聞いた男は、まず第一声で文句を言ってきた。

「お前はあの子に謝罪する気持ちはあるんだな」
「もちろん」
「そして、今後も大事にするのだな」
「俺の命の限り」
「…………」

男は腕組みをした。
試すかのように義勇を見つめる。

「その言葉に嘘偽りはないな」
「ない」
「…………」
「天地神明に誓う」

義勇は姿勢を正して、男に向かってはっきりと誓った。


「そうか。ならば一つ、策を与えよう」


男は立ち上がって棚から小さな木箱を持ってきた。


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