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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第29章 そっと、ずっと


稽古終わりで義勇は甘露寺の家へと走った。
突然屋敷に現れた義勇に、甘露寺は驚いた顔を見せた。

「え?琴音ちゃんですか?来てませんけど」
「そうか」
「どこかに行っちゃったんですか?」
「いや……」

なんと説明すればいいかわからずに、言葉を濁す義勇。

「あいつが行きそうな場所とかわかるか」
「ええと……んー……、しのぶちゃんのお家でしょうか」
「あいつの育手の家は知っているか」
「あー、はい。大体の場所なら」
「教えてくれ!」
「紙に書くから待ってください」
「すまない」

甘露寺はおおよその場所を書いて渡してくれた。

「煉獄さんのお家にいるときに、この辺って言ってました」
「助かる」
「あの、冨岡さん。琴音ちゃんと喧嘩しちゃったんですか?」
「喧嘩……」
「出てっちゃったんでしょう?」
「……ああ」

甘露寺にバレたので、仕方なく義勇は頷いた。そのいつになくしょんぼりとした姿に甘露寺はキュンとした。

「早く見つけてあげてくださいね」
「ああ。感謝する」
「いえいえ」

義勇は甘露寺の家を出て走っていく。

「……琴音ちゃん、愛されてるなぁ」

全力疾走で去っていく義勇を、甘露寺は頬を染めて見送った。


甘露寺に書いてもらった紙を見る。
やはり山の中だが、思っていたより遠くない。これは可能性がある気がした。

おそらく甘露寺も行ったことがないのだろう。確かにざっくりとした位置しかわからなかった。

書かれていた山に入り、それらしい建物を探した。日が暮れてきて、義勇は焦るが、諦めずに山中をうろつく。

昨日寝ていないこともあり、疲れも出てきた。
しかし、これも鍛錬だと思って捜索を続ける。


山道を駆けながら甘露寺の言葉を思い出していた。

『琴音ちゃんと喧嘩しちゃったんですか?』

そうか、これは喧嘩なのか、と義勇は思った。
子どもの頃は喧嘩をしたが、この特別な関係になってから二人は喧嘩らしい喧嘩をしたことがなかった。


……これが喧嘩なのだとしたら、やはりきちんと仲直りしなければ



恋人同士の喧嘩など、義勇にとっては未知の領域だ。しかし、その発端は自分にあるのだから自分でなんとかせねばならない。

いつも行動の殆どを琴音任せにしてきた。

だが、今回はそれじゃ駄目だと義勇は思った。


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