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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第29章 そっと、ずっと


義勇はとてつもなく焦った。
彼女があそこまで泣いて、怒る理由。思い当たる事は一つしかない。

……『あれ』を、見られた

稽古場での女性隊士との接吻。それに違いないと確信した。

ちゃんと説明をしたい。
だが、聞いてくれるだろうか。

目眩がする程の不安にかられながら、琴音を探す。屋敷中を見て回ったが、彼女の姿はない。

まずい。まずいぞ。
義勇は大いに焦る。
どこに行ったのかがわからない。

琴音の部屋に戻ってみるが、日輪刀が置いてある。
もう夕方だ。今、鬼は静かにしているが、絶対に出ないという保証はないのだ。刀を持たずに、もし鬼に遭遇したらどうする。


義勇は焦る気持ちを落ち着けて、胡座をかいた。
彼女の行きそうなところを考える。

真っ先に思いつくのが蝶屋敷と煉獄邸だ。

義勇は立ちあがり、家から近い蝶屋敷へ走った。蝶屋敷に着いた時、目の前に一羽の鴉が飛んできた。

「琴音の!琴音はどこだ!!」
「言エナイ」

鴉は手紙を付けていた。

そこには『お世話になりました。私のことはお気になさらず。心配及び返事不要』と書いてあった。
手紙を読んだ義勇は青ざめる。また自宅へと走った。

琴音の部屋に飛び込むと、彼女の日輪刀と隊服、製薬セットが消えていた。

……やられた

義勇が家を出たとき、彼女はすぐそばに身を潜めていたのだ。義勇と入れ替わりに家に入り、必要な物を持って家を出た。

そう。
家を出ていってしまったのだ。
行き先も告げずに。


義勇は歯を食いしばる。

……違うんだ。あれは、違うんだ、琴音

心の中でそう叫びながら、この部屋で一人で泣いていた琴音を思い出す。


どんなに悲しかっただろう。
どんなに辛かっただろう。


……俺は、琴音を傷付けたんだな

自分は、寝言で男の名を呼んだと思っただけで腸が煮えくり返りそうな程の怒りを覚えた。
もし琴音が他の男と接吻などしていたら、理由はどうであれ激怒しただろう。

そこにはどんな言い訳も存在しない。

誰が悪いのかと言われれば、十割自分に非があるとわかっている。
だからこそ、誠心誠意謝らなければならないと義勇は思った。

例え琴音が許してくれなくても……


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