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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第29章 そっと、ずっと


翌日、琴音は迎えに来た義勇と共に冨岡邸に帰ることになった。まだまだ完全回復には程遠いが、二人の希望をしのぶは了承した。絶対に無理をするなとしのぶに散々念を押されて蝶屋敷を後にする。

義勇の背に乗る琴音が、嬉しそうに微笑んだ。

「お迎え、ありがとう。やっと帰れる」
「ああ」
「嬉しいなあ」

琴音が義勇の首にぎゅっと抱きついてきた。義勇の心が暖かくなった。
あまりにも軽くなってしまった琴音に辛くもなったが、一週間振りにまた自分の元へと戻ってきてくれたことが嬉しかった。

家に着くとすぐ、義勇は琴音の部屋に布団を敷き、座っている琴音を心配そうに覗き込んできた。

「着替え、手伝うか」
「自分で出来るよ」
「何が食べたい。千代に頼む」
「まだお腹空いてない」
「何か欲しいものはあるか。茶でも飲むか」

いろいろ喋る義勇に、琴音はくすりと笑った。羽織を脱いで、そっと彼へと手を伸ばす。

「あのね。抱きしめて欲しいな。私が欲しいのは、それだけ」

義勇は少し驚いた顔をして、その後でふっと力を抜いて柔らかに微笑んだ。自分に向けて伸ばされた手をしっかりと取る。

「わかった」

義勇の大きな身体が、優しく琴音を包み込んだ。

「おかえり」
「ただいま」

義勇の温もりを感じながら、力を抜いて彼に寄りかかる琴音。

「少し、このままでいてもいい?」
「移動で疲れたか?」
「ううん。甘えたいだけ」
「そうか。なら、いくらでも甘えろ」

義勇は琴音を抱え直して楽な体勢にしてやる。琴音は嬉しそうにくっついて、義勇もそれをしっかりと受け止めてやった。


言葉はなくても、お互いの幸せを感じた。

いつの間にか顔が近づき、そっと合わせられる唇。愛しさをふんだんに詰め込んだ甘い口付けを何度も交わした。

義勇はうっすらと目を開けて琴音を見た。
少しやつれた頬もほんのりと朱に染まり、伏せられた長い睫毛が影を落としている。嬉しそうに義勇の口付けを受け入れるその可愛らしい姿に、彼女が苦しくないよう気を付けながら夢中で口を吸った。


二人は口を離すと、また強く抱きしめ合った。


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