第28章 女の子だって
炭治郎とのざるそば早食い競争を終えた義勇は、琴音を迎えに蝶屋敷に行った。
屋敷に行くとまずしのぶに呼ばれた義勇。診察室に通される。
「来ていただいたところ申し訳ありませんが、まだ琴音をお返しすることは出来ません。面会もさせられません」
「何故だ」
「具合が良くないので」
「俺が家で看病する」
「それは、琴音が望まないと思います」
「……何故だ」
「弱っているところを見られたくはないでしょう」
義勇は眉をしかめた。
「……そんなに、悪いのか」
「嘔吐と吐血、意識混濁」
「………大丈夫なのか。何か対策は」
「これは解毒剤を作るためのものなので、当然のことながら現在の我々に打つ手はありません。琴音が自らの力で戦って毒を抑え込むしかないのです」
義勇は俯く。
「今後の予定ですが、彼女が回復したら、その二十日後くらいの月役付近を避けた日に、血清を作るために最大量の採血をします。そこで彼女は極度の貧血になります」
「…………」
「くれぐれも無理をさせないようにお願いします」
「わかっている」
「今日はお引取りください」
「お前は大丈夫なのか、胡蝶」
「……琴音が何か言いました?」
「詳しくは、何も」
「そうですか」
「お前たちは、一体……いつから……」
「これが私達の戦い方。薬と毒を得意とする私達にしか出来ない戦い方を、もうずっと前から準備してきたのですよ」
しのぶは穏やかに笑って「ここは私に任せてお引取りください。少しずつ快方に向かっております。ご安心ください」と言った。
「明日、また来る」と告げて、義勇は帰るしかなかった。
琴音の部屋へと移動するしのぶ。
はあはあと息荒く横たわる琴音。体のあちらこちらに赤黒い肉腫が出来ていた。
「琴音」
名を呼ばれて、琴音がうっすらと目を開けた。
「し…の…ちゃ…、」
「先程、冨岡さんが来ていましたよ」
「と…みおか、が……?」
「帰ってもらいましたけど」
「あは…は、あり…がと」
琴音はしのぶに感謝した。こんな姿は見られたくない。
しのぶは冷静に琴音の様子を見ている。