第28章 女の子だって
二人は木に持たれながら、技の検証をする。
「非常に強い技だが、速すぎる。目で追えないから味方も巻き込んでしまう可能性がある」
「なるほど」
「打つときを厳選することだ」
「わかった」
「三連撃ではなく単発では出せないのか?」
「いきなりは、無理なの。一振りで出せたらいいんだけど」
「段階を踏まないと出せないということか」
「うん。でも、威力を抑えればいけるかもしれない」
「それでもいい。何種類か試して出来るようになっておいた方がいい」
「状況に合わせて使い分けられるね」
「そうだ」
普段無口な義勇が沢山喋る。
槇寿郎が炎の師範なら、義勇は水の師だ。こうして親身になって助言をくれることに感謝をした。
「ありがとう」
「? いや別に」
「前から思ってたんだけど、冨岡って意外と面倒見いいんだよね」
「……意外か」
「意外でしょ!意外以外の何物でもないよ」
「洒落たつもりか」
「ふふふ。まあ冨岡は優しいから。意外でもないのかな」
義勇はやや照れくさそうにそっぽを向いた。
「別に。優しくはない。面倒を見るのも、相手を選ぶ」
「ん?」
「見たいと思った奴しか見ない」
「へぇ」
「だからお前とは違う」
「私は八方美人だから。誰の面倒でも見るもんね」
「自覚はあるんだな」
琴音はくすっと笑った。笑いながら、義勇の顔を覗き込むように見た。
「ね。柱稽古、やんなよ」
「…………」
「こんなに的確な稽古付けられるんだもん。みんな助かるよ」
「…………」
「見たいと思った子だけでもいいから」
「俺は水柱じゃない」
「水柱だよ。立派な水柱。誰もが認めてる。冨岡以外のね」
「…………」
「せめて炭治郎くんだけでも」
「あいつはもう水の呼吸を使わない」
「それでも、だよ。きっとあの子にとって大切なことを冨岡は教えてあげられる。なんかそんな気がするの」
「……俺にそんな力はない」
「炭治郎くんも、冨岡のこと大好きだし」
「…………」
義勇が俯いてしまったので、それ以上琴音は言葉を紡ぐことをしなかった。
琴音の身体が回復してきたので二人で山を下りる。木刀などは全て義勇が持ってくれた。