第28章 女の子だって
「ありがとう。……いきます」
琴音は義勇から離れて立ち、集中力を高めて構える。
ひゅぅっと大きく息を吸って走り、勢いをつけて刀を抜いた。
鞘から抜刀する一撃目。ゴオッと炎を纏った力強い切り上げ。
そこからすぐさま振り下ろされる二撃目。今度は流麗な水の波紋を纏った袈裟斬り。
そして勢いをそのままに、横に振り抜く三撃目。炎をと水の両方の波紋を纏っている。三連撃の中で最も強く、山の中に大きな衝撃波が走った。
義勇は目を丸くして見ていた。
琴音の技は完全に炎と水が混じり、相乗効果で力があがっている。
だが。
「違う。これじゃないの」
「……え?」
「見せたいのはこれじゃない」
「…………」
「もっかい、いい?」
「ああ」
納得していない琴音。
同じように三連撃を放つが、やはり納得していない。
「もー!何で出来ないの!」
「……どうなりたいんだ」
「あのね、ちゃんと出来るとね、三発目は炎も水も出ないの」
出来ないことに苛つく琴音が、プンプン怒りながらそう言った。
……どちらも、出ない?
義勇は驚く。
「もう、この下手くそ!もっかい!」
自分への怒りを叫びながら、再度技を出す琴音。しっかりと強い技となっているのに、やはり納得していない。
「師範のところでは一回出来たのに!あれは偶然だったのかな。もっかい!」
体力を使う技を何度も出し、息が上がってくる琴音。義勇はじっと見ていた。
やっぱり出来なくて、琴音は悔しそうに刀を下ろした。
「……夜月」
「はぁ、はぁ、なに?」
「もしかしたら、炎と水の力を均衡に保てば出来るのでは?」
「炎と水を、……均衡?」
「お前の三発目、水と炎が混じり合って十分に強いんだが、毎回水か炎のどちらかが強い。今のは炎が強くて、さっきのは水が強かった」
琴音は目を見開く。
「そうか。そうかも」
「お前はやはり技が炎に流れがちだ。だが、本来は水の方が強く出せるんだ。上手く均衡をとってやってみろ」
「うん!じゃ、もっかい…」
「待て。息が上がっている。連発しすぎだ。まず瞑想して思い描いてみろ。呼吸も整えてからだ。出来るものも出来ない」
「はい」
冷静に分析をして、助言をくれる義勇。
琴音は座って瞑想し始めた。