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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第28章 女の子だって


しばし膠着した後、琴音がふっと力を抜き、義勇も手を離す。

「冨岡、攻撃してきてくれない」
「…………」
「殴ってくれてもいいのに」
「無理言うな」

琴音は口を尖らせた。
杏寿郎さんならやってくれるのに、という言葉を飲み込む。

「なんでよ。刀でなら吹き飛ばしてくるじゃん」
「刀と拳は違う」
「…………」
「拗ねるな」

「私、そんなに弱い?」
「強い」
「なら、」
「女を殴れるわけないだろう」
「なにそれ。前、私を殴ったのは誰よ」
「子供の頃だろう。もう女は殴らん」

琴音はむくれるが、義勇の言うこともわからなくなはい。
刀や蹴りで戦うのと拳で殴るのとでは、なんとなく違う気がするのもわかる。

「……ま、いいや。ありがとう。準備運動はこんなもんかな」

琴音は横においていた木刀を取りに行く。

「私も男だったらよかった」

ため息混じりでそう呟く琴音。それは嫌だなと義勇は思った。



木刀を持ち、二人は打ち合っていく。
義勇は刀を持つと全力で相手をしてくれて、琴音も嬉しかった。

琴音は基本的には炎の呼吸で戦うが、時折隙を狙うかのように変則的な水の呼吸で飛び込んでくる。その動きは極めて速く、予測が難しい。
常軌を逸した戦い方に、義勇は驚きながら己の剣を力強く振るう。


琴音と義勇の木刀がカァンという音をさせて当たり、義勇に薙ぎ払われて横に飛んだ琴音。

すぐさま体勢を立て直したが、不意にくらりとよろめいて膝をついた。義勇が驚いて駆け寄る。


「おいっ!」
「……大、丈夫」
「どうした」
「ちょっと……ね。少し休憩しようか」

琴音は立てている片膝の上に頭を置いて、目を閉じている。眉は僅かに寄せられており、苦しそうな表情を浮かべていた。

義勇の肩を借りて歩き、木に持たれかけさせてもらった。

琴音は布袋から一包薬を取り出して飲む。
紙を取り出して、携帯筆記具で何やら書き込んでいる。

「うーん……やっぱりここまでかな。もうちょっといきたかったけど。これ以上だと……どうかな……」

書き込みながらぶつぶつと呟き、考え事をしている。書き終わると手をおろし、顔を上げて目を閉じ、ふぅー……と大きく息を吐いた。


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