第27章 あなたの腕の中で※
温かい湯船の中で琴音はリラックスしているが、義勇はだんだんと熱がこみ上げてくるのがわかった。
しかし、おそらく琴音は体調が良くない。無理はさせたくないし、せっかく身体をきれいにしたこともあってぐっと我慢をする。今、抱いてしまったことも本当はよくなかっただろう。
引き返せなくなる前に湯から上がった。
寝間着を着て部屋に戻り、琴音の髪を丁寧に拭いてやる。彼女はもううとうとし始めていた。
「明日、稽古付き合ってくれる?」
「体、大丈夫なのか」
「うん。山でやろ」
「俺は構わないが……」
「よろしく」
やはり彼女は進む足を止めない。無理してでも頑張ってしまう。
義勇は心配になる。
義勇が布団を敷くと、のそのそと這い登り、布団の端にこてんと倒れた。そのまま寝息を立てている。
「……子どもか」
義勇は自分の髪をワシワシと拭きながら、眠る彼女を見つめた。
今日体を触ってみて、やはり痩せたと思った。
薬が彼女の命を縮めている。
だがそれを止めることは自分には出来ない。歯がゆく思う。
そんな義勇の想いを知らない琴音は、情交の疲れを少し表情にのせながらすやすやと眠っている。
義勇は髪を拭き終わると、自分も布団に入った。
いつまでこうして一緒の時間を過ごせるのだろう。この先何度こうして体温を分け合いながら寝られるのだろう。
自分の命なんかより、ずっとずっと大切な少女。
失いたくない。
せめて今だけでも安らかに眠れるようにと願いながら、両手で彼女を包み込んだ。