第27章 あなたの腕の中で※
「口吸いだけでいい」
「…………っ!」
「ほら」
義勇はあと少しで唇が触れる所まで顔を近付けて止める。ここまで近付くならしてよ!と思う琴音。
「……意地悪」
「なんとでも」
女からするなんて恥ずかしい。
こんなの、はしたない。
そう思うが、この男の余裕っぷりになんだか悔しくなってきた琴音。元来負けず嫌いの彼女。覚悟を決めた。
すうっと小さく息を吸うと、義勇の両頬に手を添えて、己の唇を重ねに行った。
口が触れると琴音は湯船で膝立ちになり、上の体勢をとった。そのままぐっと唇を押し付けて、舌で義勇の唇をそっとなぞり、ぎこちないものの彼の口内へと進む。舌を絡めていつも義勇が琴音にするような情熱的な激しい口付けをした。
まさかこんな口付けをされると思っていなかった義勇は完全に不意を突かれ、驚いて動揺した。てっきりチュッと軽く接吻して離れると思っていた。
少し息が上がったところで、唇を離す琴音。
頬を紅潮させている。
「……これで、ご満足?」
目を逸らしながらそんな事を言った。
まだ慣れていないくせに。
まだ大人じゃないくせに。
本当は恥ずかしくて仕方がないくせに。
強がってそんな事を言ってくる琴音に義勇はたまらなくなった。
「満足なものか」
「え」
「こんなことが出来るのなら、もっと色々できるだろう。してこい」
「ええ……」
「遠慮するな」
義勇は笑いながら琴音を抱きしめた。二人の肌が密着する。
「も、無理」
「降参か」
「……はい」
耳元で義勇の楽しそうな声がした。
「よく頑張ったな」
義勇は囁いて、彼女の首筋をぺろりと舐めた。
「っ!ひゃんっ!」
「あとは俺に任せろ」
チュッというリップ音をさせて首や鎖骨に刺激を与えながら囁く義勇の声は、どこまでも色気を帯びていた。