第27章 あなたの腕の中で※
洗い終わったのに、義勇が離れていかない。
「体冷えちゃうよ」
「……寒い」
義勇はゆっくりと立ち上がって湯船に行った。琴音は途中になっていた体の洗いを再開させる。義勇からの視線が痛い。
痛いと思いながらも、その熱い視線にズグンと下腹部がうずく気がした。
体を洗い終わると、少し躊躇しながら湯船に向かう。義勇が入っている湯船にそっと足を入れる。
「し、失礼します」
消え入りそうな声でそう言って、湯船の端に入ってお湯に浸かった。二人で入るには狭い湯船。義勇もぎりぎりの端に避けている。それでも肌が触れてしまう。
互いに顔が赤い。
「今夜は……」
義勇が小さな声で言った。
「お前の体調が良くないから」
「大丈夫…だよ」
「だが」
「少し、ふらつくくらいだから」
「…………」
義勇の熱が上がった気がした。
「危険日は」
「終わった」
「……………」
チャプンと音を立てて、義勇が琴音の方に体を向けた。
琴音も少し期待している自分に気が付いて、戸惑う。目線だけ義勇に向けた。
義勇は彼女の方に身体を向けたが、それ以上近付かない。
「義勇さん……?」
彼から欲の気配がするのに、踏み込んでこないことを不思議に思う。琴音もいいと言っているのに、必死で我慢している様子がわかる。
義勇は琴音をじっと見つめながら、静かに言った。
「危険日が終わって大丈夫となったら、お前から誘ってこいと言った」
「へ……?」
「たまにはお前から、来てほしい」
バシャンと水音を立てて琴音がのけ反る。
忘れていた。確かにそんな話をしていたのだ。
というか、あれは本気だったのか。
琴音は焦り倒す。
「え……、や、あの……」
「どうした」
「勘弁して……」
真っ赤になった顔を抑えて、ブンブンと横に振る。義勇は面白がって彼女を覗き込む。湯船の中でぐっと距離を縮めてきた。
「早くしないとのぼせるぞ」
「……無理ぃ」
「ほら、頑張れ」
「やぁだ……、出来ない」
予想以上の可愛らしさに、本当にのぼせそうになる義勇。そろそろ色んな意味で我慢ができなくなってきた。