第27章 あなたの腕の中で※
「……助平」
「心配しているのも本当だ」
琴音は少し考えて、素早く判断をだした。
小さくため息をつく。くるりと義勇に背を向けて着物を脱ぎだした。
「自分で脱ぐ」
琴音は一緒に入ることを了承した。
死ぬ程恥ずかしいが、一週間彼を放ったらかしにしたのだ。彼の気持ちもわかる。どのみち今夜は抱かれるのだろうと思ってはいた。
晩御飯、鰻だったしね……
頬を染めながら、ゴソゴソと着物を脱ぎ、手拭いで体を隠してサッと風呂場に移動した。
手桶でお湯を汲んで体にかけ、軽く洗っていると服を脱いだ義勇も風呂場に入ってきた。
ドキッと心臓が跳ねて湯船に飛び込んだ。
体を隠すことなく、いつもの無表情で湯船にむかって歩いてくる義勇。琴音はその姿を見ることが出来ずに、恥ずかしそうに俯いた。
義勇は湯船の側に座り、琴音の頭を撫でた。てっきりすぐに湯船の中に入ってくると思っていたので、琴音は拍子抜けした。
「ゆっくり暖まれ」
「う…うん」
琴音が動くと、チャプンと水音が風呂場に静かに響いた。
義勇は穏やかに頭を撫でるだけで、それ以上のことをしてこない。
しばらく無言が続き、琴音はそっと湯から上がる。転ばないように足元を気をつけながら洗い場に行って体を洗う。義勇の視線を気にしながら、こそこそと洗っていると背後に義勇の気配。
後からスッと手を伸ばされて身を固くするが、義勇の手は琴音の髪に伸ばされて、わしゃわしゃと洗い始めた。
長い時間腕を上げているとだるいので、洗髪してもらうのはありがたかった。緊張を解いて、ゆったりと義勇に身を任せた。
「……ありがとう」
「ん」
人に髪を洗ってもらうのなど、いつぶりだろうと考えた。兄に洗ってもらったのを思い出す。なんだかとても心地よかった。
「気持ちいいー……」
そう呟くと、義勇の手が一瞬止まった。ん?と琴音が思って後ろを振り返ると、また再開された。
手桶のお湯で、髪の泡を流される。丁寧に何度も流してくれた。
「ありがとう」
琴音は髪をギュッと握って水を切り、くるっと上げて風呂用の髪留めでアップに纏めた。