第27章 あなたの腕の中で※
二人で義勇の家に帰宅した。
義勇が先に入り、琴音が続いて玄関に入って戸を閉めた。
「只今戻りました」
琴音がそういうと、義勇は嬉しそうに「おかえり」と言った。
玄関で草履も脱がないままに、荷物を置いた義勇にぎゅっと抱きしめられる。琴音も嬉しそうにその胸に顔を寄せた。
家に上がると、それぞれ部屋着に着替えてのんびりとした。晩御飯はもう食べているので、あとは寝るだけだ。
琴音は部屋で研究セットを机に広げたりしてゴソゴソとしていた。
義勇は風呂を沸かして先に入る。
風呂から上がり、琴音に声をかけに行くと彼女は机に伏していた。
慌てて駆け寄る義勇。
「おい、大丈夫か」
「……あ、うとうとしてた」
「具合悪いんじゃないのか」
「眠いだけだよ。寝れば治る。心配かけてごめん」
琴音は目を擦って体を起こした。
「本当か」
「本当だよ」
「……風呂どうする」
「ん?ああ、ありがとう。いただきます」
琴音は準備をしようと立ち上がり、少しふらっとした。義勇がそれを支える。
「えへへ、ごめんね」
「……………」
「大丈夫だよ」
「……………」
義勇は眉を寄せた。
「お前……痩せたな」
「そう?」
「……………」
風呂セットを持って歩き出す琴音から荷物を奪い、風呂まで運んでやる。
脱衣所の棚に着替えを置き、琴音を振り返った。
「俺も入る」
「………は?」
「足元ふらついている。危ない」
「え……いや、…………は?」
目を丸くする琴音。
「脱げ」
「……え、きゃぁぁぁ!」
「うるさい」
「いやぁぁぁぁ!ちょっ、何っ!?」
義勇は琴音の帯を取り、着物を開く。琴音は驚いて着物を抑えるが、お構いなしだ。
「……くっ、そう簡単に」
脱がされてたまるか!と防ごうとするが、想像以上に足に力が入らなくて、自分の弱り具合に琴音は驚いた。逃げられない。その事実が突きつけられた。
「ほらな」
「……っ」
「危ないから、一緒に入ってやる」
「お風呂くらい一人で大丈夫だよ」
「駄目だ」
「…………」
琴音はせめてもの抵抗で、手で着物を前で合わせて義勇を睨んでいる。こうしていればおそらく義勇はこれ以上手を出してこない。