第26章 仲間
義勇は帰路を歩きながら、また琴音の手を取った。もはやそれが当たり前であるかのように繋いでくる。
村田たちに躊躇うことなく交際を明かしたことも、自分のことをしっかり恋人だと思ってくれていることがわかって琴音は嬉しかった。
「しんどいか」
「身体?……少しね」
「そうか」
「でも、大丈夫。楽しい時間を過ごせたから」
「そうだな」
義勇は琴音の足に合わせてゆっくり目に歩いてくれる。
「……あの袋、まだ持ってたんだね。驚いちゃった」
琴音がそう言うと、義勇が不思議そうに彼女を見た。
「何故、驚く」
「だってそれ、あげたの何年前よ」
「だいぶ前だな」
「ずっと持ってたの?」
「持ち歩いている。薬入れだ」
あれからずっと、琴音から追加で薬を貰うと義勇はこの巾着に入れていた。
「それさ、昔作ったやつだから下手くそでしょ。形歪んでるし」
「そうか?大きさもいいし使いやすい」
「縫い目もガタガタで、恥ずかしい」
「俺は気に入っている」
「作り直すよ」
「必要ない」
「でも」
「いい。これがいい」
そう言って義勇は柔らかに笑う。荷物と彼女の手で義勇の両手は塞がっているため、目線のみ自分の胸ポケットに向けた。
「ずっと俺を守ってきてくれた。変える気はない」
「そう?」
「ああ」
「……ならいいけど」
琴音は頬を赤くして俯いた。
子どもの頃、特に何も意識することなくあげた物を、彼は何年もずっと持ってくれていた。それがなんだか嬉しくて、照れくさくて、何より義勇の笑顔が男前すぎてまともに顔が見られなかった。