第26章 仲間
食べ終わると琴音は腰につけている布袋から小さな巾着袋を三つほど取り出した。
男三人が見ている中で、巾着から出した包を手早く仕分けていく。
「薬。あげる。お守りとして持ってなよ」
「え、いいのか?貴重な物なのに」
「勿論、いいよ。戦いで役に立てて。どの薬が何だかわかんないと思うから、書いとくね」
琴音は携帯用の筆記具で薬包に「解熱」「解毒」「痺れ」などをサラサラと書いていった。
数種類の薬包を巾着袋に入れて、村田と竹内の前にそれぞれ置いた。他の薬包はひとまとめにして、自分の布袋へと片付けた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「ありがとな」
「どういたしまして」
村田と竹内は琴音から渡された巾着を嬉しそうにベルトに括り付けた。
義勇はその巾着袋をじっと見つめ、胸ポケットから似たような物を引っ張り出した。
「あ、冨岡も持ってんだ」
竹内がそれを見て言った。
義勇の巾着袋は二人がもらったものよりだいぶ古い物だった。琴音は少し驚いた顔をした。
「みんな、お揃いなんだな」
「手作りだから、私の」
「へぇ、そりゃありがたいな」
「他の隊士は誰も持ってないよ。同期だけ。ふふふ」
あなた達は特別だよ?と琴音に言われている気がして、村田と竹内は嬉しかった。
「絶対に生き残るんだよ」
「ああ」
「夜月もな」
「うん」
竹内が義勇に目を向ける。
「冨岡もな」
「ああ」
「夜月をしっかり守ってくれよ」
「わかっている」
「こらこら!私は守ってもらわなきゃいけないほど弱くないよ!」
「違う。男として、って事だよ」
竹内は笑いながらそう言った。
「任せろ」
義勇は静かにそう言って、竹内は「おう」と答えて満足そうに頷いた。
「なあ、お前ら二人のときは何で呼び合ってんの?まさか『冨岡』『夜月』じゃないよな」
「べ、別に何だっていいでしょ」
「はは、照れんなよ。教えろよ、なあ」
「もーっ!うるさいなぁ」
「『琴音』だ」
「と、冨岡っ!答えなくていいよ!!」
「あはは!夜月は?夜月は冨岡の事なんて呼んでんだ?」
「『義勇さん』だ」
「だから!なんで答えるの!」
赤い顔をして義勇を止める琴音。
村田と竹内は笑っていた。