第26章 仲間
「そ、そうなのか」
「あー……うん。まあ、そういう事になってるの。えへへ。他の隊士には内緒ね。隠してるわけじゃないけどさ」
「別に、言ったりしねぇよ」
村田は少し寂しそうにしながら話を続けた。
「いつから?」
「私が柱になった辺りから」
「え、じゃあ昔噂が立ったときは」
「あの時は全然、欠片もなかったよ。そんな噂もあったね。懐かしいなぁ。もう大分前のことだね」
そこへ鰻が運ばれてきた。
皆で食べる。
「初対面で大喧嘩してたお前らがねぇ……」
「あの時は竹内に大変ご迷惑をおかけしました」
「本当だぜ。お前、『冨岡なんて大っ嫌い』っつって叫んでたな」
「そうだったね。でもあれは冨岡が悪かったんだよ。ね?」
「………俺だけが悪かったわけじゃない」
「人生何がどうなるかわかんないね」
そう言って笑う琴音を見て、綺麗になったなと竹内は思う。義勇と並んで座る姿が似合いすぎていて、溜息が出るほどだった。
「くそー、俺も彼女欲しいな」
「村田、彼女いないの?」
「いねぇよ!悪かったな!」
「まあ忙しいもんね。柱稽古、きついでしょ」
「地獄だよ……やっと音柱の稽古が終わった」
「あはは、でもきっと強くなれるから。頑張って!」
「彼女がいたら、頑張れる」
「平和な世界になったら作りなさいな」
琴音は緩やかに笑った。
「村田は案外いい男だから、いけるよ」
「案外ってなんだよ!」
「髪の毛サラサラだし」
「そこしか褒めるところねぇの?!ゴワゴワしてる冨岡の方が猛烈にモテてますけど?」
「そりゃ村田と冨岡じゃ、根本的な顔の作りが違いすぎるからな」
「なんだと竹内!このやろ!お前だって彼女いないくせに!」
仲のいい隊士と楽しく食べる。久しぶりのこの感覚に、決戦前だと張り詰めていた琴音の心が和んだ。大きな責任を背負う前の、強くなりたいとひたすらに刀を振っていた昔の自分を思い出す。
義勇は義勇で、喋ったりはしないものの、この空間を楽しんでいるようだった。