第26章 仲間
それから、急に鬼の襲撃がピタリと止まった。不気味な程に。
夜の見回りは皆続けているが、指令などは入らない。
お陰で柱稽古をする柱達はそれに集中できたし、琴音としのぶは研究に没頭することができた。
しかし、これは嵐の前の静けさだ。皆わかっている。
各々戦いに向けての準備をしながら、密やかに士気を高めていく。
その中で、残された時間を大切に過ごしていた。
「……夜月」
蝶屋敷の研究室で、義勇は琴音を揺り起こす。
「起きろ」
「……ん、あれ…冨岡……?」
「何日帰ってこないんだ」
「あれぇ……そんなに帰ってなかった?……ぐぅ…」
「話しながら寝るな。……二日帰ってこなくて、その後三日だ」
義勇はムスッとしている。
全然帰ってこない琴音に痺れを切らしたようだ。
琴音は体を起こし、目を擦った。まだまだぼんやりとしている。
「帰るぞ。胡蝶には許可を取った」
義勇は風呂敷を見せる。しのぶに渡された研究セットが入っているようだ。琴音は目を半開きにして義勇を見る。
「帰る前に、なほちゃん……呼んできて」
「……わからん」
「緑色の帯してて、三つ編みしてる子……」
「わかった」
よく蝶屋敷に出入りしている義勇だが、彼に三人娘の区別をさせるのは難しい。琴音は寝ぼけながらもなほの詳細を伝えた。
少しすると義勇に連れられたなほが研究室に来た。
彼がどういう言葉を用いてなほを連れ出したかを想像すると、琴音は少し笑えた。