第25章 柱合会議
義勇は高く結い上げられた髪を解くように、琴音の心もストンと楽にしてくれた。
状況を知った上でしっかりと受け入れてくれた義勇に感謝する。心配をかけさせたくなくて言えずにいたが、話せたことで心が軽くなった。
しかし、伝えたことで義勇に辛い思いをさせてしまったことは確かで。そこが気になるところだったが、義勇の抱擁はとても優しく、琴音を守るように包みこんでくれた。大丈夫だよと言われている気がした。
「ありがとう、冨岡。たとえ短い人生だとしても、今こうしてあなたと居られることが何よりの幸せだよ」
「俺もだ」
「明日死んでも、笑って逝ける」
「俺より先に死なせない」
二人の目が合い、どちらからともなく唇を重ねた。愛おしむような、慈しむような優しい口付け。
どちらの目にも涙はない。
これは悲しいことではないから。
ただ、覚悟をするだけだ。
「今日も蝶屋敷で毒を入れてきたのか。体、辛くないか」
「あ、今日は違うから」
「ならば何をしに」
「…………」
「?」
「避妊薬の追加を貰いに。想定してなかったから、手持ちがあんまりなくて」
少し言いにくそうに琴音が告げると、義勇がビクッと身体を震わせた。
「大丈夫。昨日のことはしのぶちゃんにもう私が怒られてきたから」
「………すまない」
「いいの」
「きっと俺も怒られる」
「あはは。こってり怒られてきて」
義勇は申し訳無さそうにしながら琴音の背を撫で擦る。
「さ、仕事の話はお終いでいいかな。お腹空いた」
「ああ」
「ご飯温めて持ってくるね。待ってて」
琴音が立ち上がると義勇も立つ。
「ん?」
「手伝う」
「いいよ」
「やる」
義勇は琴音に付いて部屋を出た。廊下を歩きながら、琴音の手を取り、指を絡ませてきた。
手を引かれることはあっても、こんなふうに義勇から手を繋いでくるとはなかった。琴音が少し驚いて義勇を見上げると、彼はいつものすました顔をしていた。
「時透と……繋いでいた」
ボソっと呟く義勇。表情は変えないが、琴音の手をギュッと握る。
彼が不機嫌だった理由はここにもあったか、と琴音は思った。