第25章 柱合会議
話していると、琴音が急に顔色を変えた。
「あ…れ………、待って」
「どうした?」
「…………え…」
琴音は焦ったように指折り数えだした。そして、立ち上がって走り出す。
義勇が唖然としていると、湯呑を持ってばたばたと戻ってきて、行李をあさり出した。
「なんだ?」
「……………」
義勇の問いに答えずに、琴音は取り出した薬を飲んだ。水で流し込み、ふぅと息を吐く。その顔色は優れない。少し青ざめながら、手を下腹部に添えている。
その様子を見て、義勇はハッとする。彼も焦りを表情に浮かべた。
「昨日…危険日だったのか?」
「…………」
義勇は、己の血の気が引いていくのがわかった。
「お酒飲んでたから、私もあまり気にかけてなかった」
「……………」
「大丈夫だよ。妊娠率はそんなに高くない。薬しばらく飲むし」
「………すまない」
「義勇さんのせいじゃないよ。私がしっかりしてなかったから」
「違う!全て俺の責任だ」
義勇は琴音の肩を掴んで自分の方へ向けた。
「全部俺が悪い」
「義勇さん……」
義勇は琴音をぎゅっと抱きしめた。
「義勇さんだけが悪いわけじゃない。私の体のことなんて義勇さんにわからないしね。取り敢えず、二人で猛省。で、祈る。万一のときには……またどうするか一緒に考えよう」
「……ああ」
義勇は眉を寄せた。腕の中から琴音のため息が小さく聞こえた。
……俺の軽率な行動で、大きな不安を背負わせてしまった。薬を飲むのも負担になってしまう。きちんと確認をしなければいけなかった
「きっと大丈夫だから。心配しないで」
琴音は笑う。義勇に気を遣っているのがわかっていたたまれなくなった。
柱同士の恋愛。その洗礼を浴びた。
責任ある立場の柱は、当然のことながら絶対に妊娠してはいけないのだ。
もし妊娠していたら、彼女は堕胎の道を選ぶだろう。その時に彼女が深く傷つくことは想像に難くない。
「次の月役は」
「半月とちょっと先」
「……待とう」
「うん」
次回の生理が無事に来てくれることを待つしかない。義勇は琴音を抱きしめる腕に力を込めた。琴音は義勇の背に手を回して、落ち着かせるように擦ってやった。
「ごめん。本当にごめん」
「…………はい」
義勇は俯いた。