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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第3章 戦いの先に


玄関で声がした。
琴音の声だった。

義勇ははっとして部屋を出る。

「あ、冨岡。お疲れ様」

廊下をにこやかに歩いて義勇の元へ来る琴音。隊服を着ている。彼女はそのまま部屋に入ってきた。

「体調はどう?お医者さん、何か言ってた?」
「もう大丈夫だと言っていた」
「そう!良かったね」

にこりと笑う琴音。話しながら畳に座り、刀を傍らに置く。義勇も胡座をかいて座る。

「どこに行っていた」
「ん?先生のところ」
「先生?」
「私の育手。薬の補充とかいろいろあってね。ちょうどここから近いの」

彼女は腰につけた布袋を指差しながら義勇に説明した。

「医者が、お前の薬を褒めていた。あの薬を飲んでなかったら、俺は危険だったそうだ」
「それは良かった。先生の薬は凄いの。私も勉強してるんだよ」
「そうか」
「いっぱいあるんだよ。解毒剤もそうだけど、吐き気や頭痛に効くやつとかね、お腹が痛いときは……」

「夜月」

義勇から、初めて名を呼ばれて琴音は目を丸くする。

「ありがとう」
「……え?」
「助けに来てくれて、薬を飲ませてくれて、ありがとう」
「……あ、ああ、うん。どういたしまして」

驚き過ぎて、上手く言葉が出ない。
こんなに素直に物申すとは。琴音は信じられないとばかりに、目をぱちぱちさせる。

「前にお前を弱いと言って、悪かった。全面的に撤回する。お前は弱くない」
「ど……どうしたの?冨岡……。今度は熱でも出た?」
「……出てない」

琴音が心配そうに義勇の顔を覗き込むと、義勇は不貞腐れたようにぷいと顔を背けた。その少し尖った口に、ふふっと笑う琴音。

「ふうん、冨岡もちゃんとありがとうが言えるんだね。ごめんなさいも出来るし、いい子じゃん」
「……………」
「無愛想なのは悪気があってのことじゃないのね。わかってきたよ」
「……………」
「喋らないから誤解されるんだね。にこってすればいいのに」
「……しない」
「あはは!意地っ張り」

琴音は義勇の頭を撫でる。
義勇は面白くなさそうにしていた。

「冨岡が無事でよかった」

琴音は心底嬉しそうな顔をして、義勇に笑いかける。義勇も表情とは裏腹に、心はほっこりと暖かくなるのを感じていた。

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