第23章 上弦
「お友達作って、楽しく生きてね」
「…………琴音?」
「You are my treasure. 」
「……え」
「…………」
「なんだ?わからない」
「I love everything about you.」
「………?」
「I’m really glad I met you.」
「…………」
「Your happiness is always wished.」
「……ずるいぞ」
義勇の耳元で、異国語で愛を紡いでいく琴音。
意味はわからないものの、なんとなく内容を察する義勇。首に巻き付いている琴音をぎゅっと抱きしめた。
酒のせいか琴音の身体は熱い。義勇は眉を寄せて目を閉じた。
「なんで、死ぬんだ」
「…………」
「きちんと説明しろ」
「……………」
「嫌だ」
「………………」
「一人は嫌だ」
「…………えへへ」
琴音はその問に答えない。誤魔化すように笑った。
「あのね。義勇くんはねー、強いの」
「強くてー、格好良いの」
「格好良くてー、優しいの」
「私には……もったいないくらい」
琴音は自分の伝えたいことだけを話す。その目は虚ろだ。
結局、上弦のことも、杏寿郎のことも、死ぬと口走ったことも、何一つ言及しない。
「好きよ。大好き。義勇くん……」
酒のせいで、もはや意思疎通が出来ないのだと義勇は判断した。