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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第23章 上弦


風呂に入り、着替えて仮眠の準備をする。
布団に入ろうとした時、部屋に義勇がやってきた。

「義勇さん……ごめん、眠いの。一人にしてくれる?」

義勇を見ることなく、小さな声でそう言う琴音。しかし、義勇は布団に入ってくる。

「……義勇さん、」
「疲れているだろう、ほら、横になれ」
「…………」
「話さなくていい」

義勇に引かれて彼の横に寝転んだ。
いつも通り、彼の腕に優しく抱きしめられた。無理に聞こうとせずに、それでもこうして安らぎを与えてくれる義勇。

義勇は安心させるように琴音の背中を擦る。言葉はなくても、大丈夫、大丈夫と言われているようだった。その心地よさに琴音は目を閉じた。

「私、甘えてるね……」
「悪いことではない」
「…………そうかな」
「そうだ」

少しすると琴音は義勇の腕の中で眠った。義勇は彼女を抱きしめたまま、その柔らかい髪を撫でる。

彼女の胸のつかえがなんなのか、おおよその見当はついている。義勇にあまり話したくないというのもわかる。心の整理がつくまで離れていようとも思ったが、やはりそれは出来なかった。

……上弦の出現は、こいつに煉獄の死を呼び起こさせる。前回の時も不安定になっていた。今回もおそらくそうだ

彼女の心中を想うと切なさがこみ上げる。それと同時に寂しさもでてくる。自分は彼女の中で絶対に杏寿郎を超えられないのだと突きつけられている気がした。
そう思わせてしまうとわかっているので琴音も義勇に何も言わない。

そんな心のもやもやを一人で抱え込んで眠る琴音。
どうしてやることもできずに、義勇はその体をギュッと抱きしめた。

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