第22章 兄と姉
琴音は仕事の合間に、木で小さな長椅子を作った。
肘置きや背もたれ部分がくるんとなった、ハイカラなデザインの白いベンチ。手のひらサイズのベンチの上に帯留めを並べてを置いた。
「器用だな」
「手先が器用じゃなきゃ薬は作れませんから」
琴音と義勇は、人形たちの中に飾られた帯留めを並んで見つめる。
「お兄ちゃんね、祝言とは別に、いつか西洋風の結婚式を挙げたいって言ってたの。だから、お洒落にしてみたよ」
「そうか」
「お金貯めてドレス買うんだって言ってた」
「どれす?……洋装のことか」
「そう。白くてひらっとした長いスカート。綺麗だよ」
義勇にはドレスがピンとこないが、スカートはわかるのでなんとなく想像した。
琴音はベンチを見ながら手を合わせる。
これは二人の為の祭壇だ。
義勇も目を閉じて、静かに手を合わせた。
目を開けると、義勇は琴音を抱きしめて口付けをした。
「……お兄ちゃんとお姉さんが見てるよ?」
「俺も散々見せられた」
義勇はお構いなしといった感じで甘い口付けをしてくる。
「仲良くしているところを見せたほうがいい。安心するだろう」
「そうかな?」
「俺はいつも二人から、お前と仲良くしろと言われていた」
「……それ、こういう仲の良さじゃないと思うよ、絶対」
笑いながら口付けを受け入れていく琴音。
そのまま畳に押し倒されたので、にっこりと笑って牽制する。
「駄目だって、何度言えばわかるのかな?」
「もう治ったと何度も言っている」
「完治まではまだかかるっていったよね?」
「完治を待つ必要がない」
すました顔をして案外性欲の強い男だなと琴音は思う。
琴音はするりと義勇の腕の中から抜け出した。その素早さと身のこなしに義勇は驚く。
「――っ!」
「残念」
「…………」
「安静期間が終わるまで待ちましょう」
「………覚悟しておけ」
義勇は悔しそうに睨んだが、琴音は笑っている。どんな状況になったとしても、彼が酷いことをするはずがない。それがわかっているので琴音は「楽しみにしてるね」と余裕を見せた。