第22章 兄と姉
まだまだ驚きが冷めやらぬ琴音は、布団の中で義勇にくっつく。
「ねぇ、もし二人がそのまま結婚してたら、私達ってさ」
「兄妹になっていたんだな」
「うわぁ、不思議」
「俺はまだ小さかったし、姉さんと一緒に夜月家に行くことになっていた」
「そうだったんだ」
「我儘な妹が出来たのか」
「義勇兄ちゃんすぐ叩くもんなぁ」
「俺は悪くない」
「駄目だこれ。絶対に仲悪いわ。毎日喧嘩だ」
布団の中で、クスクスと笑い合う。笑いながら、琴音の目に涙が溜まっていく。
「でも、もし、そんなことがあったら……どんなに、……良かったか……」
「……そうだな」
「お兄ちゃんと蔦子さんが、幸せそうに暮らしてて……、私は義勇さんといっぱい遊んで、喧嘩して、笑って、……そこに新しい家族も増えたりしたら、楽しかっただろうね」
琴音は義勇の寝間着に顔を押し付けて溢れる涙を隠す。叶うことのない幸せな世界を、頭の中で思い描いた。
義勇は優しく頭を撫でてやった。
「楽しそうだ」
「……っ、ふぇっ……、ううぅ……」
「よしよし」
義勇の寝間着を握りしめて涙を流す琴音を、義勇は撫でながらしっかりと包み込む。
その優しさと温もりが、亡き兄と重なる。
『泣くな、琴音。よしよし、いい子だ』
何故、時折義勇と兄とが重なるのか。それはわからない。
ただここに、一つの接点があったことが解った。それは奇跡のような繋がりで、義勇の記憶の中に兄は居たのだ。ずっと。
琴音の涙が止まるまで、義勇は優しく撫でてくれた。