第22章 兄と姉
引き出しに入れるときにふと気が付いた。
「……あれ?」
「?」
「………」
「どうした」
「ツ…タ……コ。お姉さん、ツタコさんっていうの?」
「ああ。そうだが。何故、それを」
「書いてある」
琴音は、蔦子の赤い帯留めの裏側を義勇に見せた。
「ここ、ほら。『LOVE Tsutako.』って」
「らぶ?」
「愛してるよって意味」
義勇は驚いた。そこに何か書かれていることは知っていたが、ただの模様だと思っていた。まさかそんな愛の言葉が書かれていたとは。
「何よ、もう。お兄ちゃん、めちゃめちゃ格好つけてんじゃん。あはは」
「兄さん、異国語扱えたのか」
「うん。私なんかよりよっぽどね。通訳のお仕事するって言ってたもん」
琴音は帯留めを大事に引き出しに閉まった。
棚の前で、そっと手を合わせる。
「お兄ちゃん、本当に大好きだったんだね。蔦子さんのこと」
「仲良かった」
「義勇さんの前でもいちゃいちゃしてた?」
「琴弥さんは、よく姉さんの膝枕で寝ていた。接吻もしていた」
「ちょっ…!まだ小さい弟さんの前で何してんのよ。ご両親がいらっしゃらないことをいいことに、案外やりたい放題してたのね……兄が失礼しました」
琴音が苦笑いをする。
「お空でも仲良くしてるかな」
「ああ。向こうには父さんと母さんもいるから、好き放題には出来ないだろうがな」
「お兄ちゃん、怒られてそう」
そんなことを喋りながら二人は布団に入る。
義勇が手を伸ばしてきたので琴音は義勇の腕の中へと身を寄せた。