第22章 兄と姉
「遊んでやろうと思って追いかけたのに、急に攻撃されて…俺も腹が立って、……お前を殴った」
「え」
「で、お前が泣いて、駆けつけた姉さんと琴弥さんに怒られた」
「あらー…」
「なんで俺だけ怒られるんだと思って、俺はお前に謝らなかった」
二人は入隊前に思わぬ形で出会っていたが、やはりその初対面でも喧嘩をしていたことがわかった。
しかも再会時と同じ、琴音が先に手を出して義勇が殴るパターン。自分たちの成長のなさに苦笑いを浮かべた。
「でもそれは義勇さんが悪いよ」
「なんでだ」
「よっつも下の子、叩いちゃ駄目でしょ」
「だが、お前が先に……」
「だとしても、駄目!」
「そんなに強く叩いていない。しかもお前は琴弥さんに抱きつきながら、隠れて俺に舌を出してきた」
「ひぇぇ、そういうことやりそう、私」
「………何故、俺だけが怒られたんだ」
「あはは。ごめんごめん、全然覚えてないや」
琴音がくすくすと笑う。
義勇も穏やかな笑みを浮かべた。
「二人の結納、私達のせいでめちゃくちゃになっちゃったのかな」
琴音は手の中の帯留めを見つめた。
「さあな。俺もその辺りのことはよくわからない」
義勇も重なり合う二つの帯留めをじっと見た。
お互いの兄と姉に、ごめんと心の中で謝った。
「義勇さんが家に来たのはその時だけ?」
「おそらく。だが、俺たちは姉さんの葬式の時にも会っている」
「お葬式……」
「覚えてないか」
「いや……待って。覚えてる、かも」
琴音は記憶を辿る。