第22章 兄と姉
何かが引っかかっていて、閉まらなくなっている引き出し。
不思議に思って義勇は引き出しを引っ張る。
カタンと言う音と共にそこから出てきたものを見て、義勇は息を飲んだ。
「…………え…」
その声に、片付けが終わった琴音が振り向いた。
「どうしたの?」
「……………」
声をかけても、義勇は引き出しを見たまま固まっている。琴音が不思議そうに義勇に近付いて顔を覗き込むと、彼ははっとして彼女に目を向けた。
驚きの表情を浮かべたまま、じっと琴音を見つめる義勇。
そして何も言わずに立ち上がった。
自室へと走っていく。
「え?」
なんのことやらわからずに、ぽかんとする琴音。
義勇が見ていた引き出しを覗くが、別に大したものは入っていない。
「なんだろ?」
首を傾げていると、スパァンと戸が開いた。ビクッとする琴音。
夜なのになんでそんな物音を……と思ったが、焦ったように義勇が琴音の前に座って、無言でズイッと右手を差し出した。
その手には綺麗な帯留めが乗っていた。
一見なんの変哲もない帯留めだ。芍薬の花があしらわれている。
しかし、これを見て琴音も驚いた顔をする。
「え……!?」
琴音は身体を反転させて、先程の引き出しに手を入れた。色違いで同じ形をした帯留めを取り出した。義勇の手には赤色の、琴音の手の中にはくすんだ白色の帯留めが乗っている。
「なんで、……義勇さん、これって……」
「お前の兄の名は」
「……お、お兄ちゃん…は、」
「夜月…琴弥(ことや)、か?」
「そう、だよ」
「お前の兄さんは、俺の姉さんの婚約者だ」
琴音の大きな目が真ん丸になった。