第22章 兄と姉
義勇の安静期間は一週間となっていたので、熱は下がった後も仕事は来ずに、珍しく少しのんびりとした。
琴音は忙しくしていたが、時間のあるときは義勇に寄り添って過ごした。
夜、琴音が部屋で仕事をしていると、枕を持って義勇が入ってきた。
「任務ないなら寝るぞ」
「ちょっと待って。まだやることあるの」
「……………」
「先に寝てていいよ」
義勇の方を振り返りもしない琴音に、彼は不機嫌になった。文机に向かって座る琴音を後ろから抱きしめる。
「こら」
「…………」
「寂しいのね」
「………抱けないし」
「安静中です。あたまりまえでしょ。傷口開くよ」
「…………」
離れようとしない義勇にため息を付きながら、琴音は手を止めずに仕事をしていく。
しばらくくっついたままの義勇。なかなか諦めないなと思った琴音は一度仕事を終わらせようと資料をまとめて揃え始めた。
それが解ったのか、義勇は少し嬉しそうにした。
「全く、困ったさんだね」
「…………」
「もう終わるから、あとちょっと待って。あ、手ぇ離したほうが早く終わるよ?」
そう声をかけると、義勇は腕をパッと離した。その可愛らしさに笑いがこみ上げた。
琴音の片付けを待つ間、義勇はなんの気なしに部屋を見ていた。棚の上には人形が増えて賑やかになっている。それぞれにどんな名前がついているのか、とても気になるところだ。
そして義勇は、人形たちの下にある引き出しが少し開いているのに気が付いた。戻そうとしたら、何かが引っかかっていた。
義勇は首を傾げた。
何故か妙に気になった。