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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第21章 天女


義勇はとろんとした目で琴音を見る。少し不安そうだ。

「まずは寝よう。厠、行く?」
「……行く」
「よし、なら連れてってあげる」

琴音は義勇に肩を貸して厠へと向かう。

「中でも手伝おうか?」
「……いい」

着物の裾を、琴音がさり気なく捲って帯に挟み込んでやる。厠から出てきた義勇をまた部屋へと連れて行って寝かせた。

水分を取らせた後に、義勇の口へ小さな金平糖が入れられた。

「苦い薬の、口直し。頑張ったご褒美だよ」
「………美味い」
「糖分は必要なの。食べ終わったら寝ようね」

琴音は義勇の額の汗を拭き、濡らした手拭いを頭に乗せた。

「私、これから任務なの。何かあったら寛ちゃんに伝えてもらうから」

義勇の鴉、寛三郎がとことこと歩いてきた。義勇の側にちょこんと座る。

「寛ちゃん、よろしくね」
「任セロ」

「出来るだけ早く戻るよ」
「……わかった」

琴音は義勇に「いってくるね」と声をかけて出ていった。彼女は終始笑顔で余裕な感じを見せていたが、最後だけ微かに急いだ表情を見せた。

……任務の合間に無理して来てくれたのか

義勇はぼんやりと思う。


彼女は治療中は常に笑顔だ。
どんな瀕死の隊士にも「大丈夫だよ」と優しく声をかける。隊内では『紅衣の天女』などと呼ばれているのだ。

義勇は彼女の治療を受けることがなかったので、ふぅんとしか思っていなかったが、確かに皆の言うことが解った気がする。弱っているときに優しくされるのは、なんだか心がふわふわする。

熱を出すなど数年ぶりのことなので、かなり戸惑っているが、琴音が来てくれたことは強い安心感となった。

……あいつへの恋文も増えるわけだ

以前、琴音に甘える善逸たちに腹を立てていたが、いざ怪我人側に回ると彼らが琴音を求める気持ちが解って妙に納得をした。


義勇はそっと目を閉じた。身体が熱い。
直ぐに眠りにつく。身体が回復を求めているとわかった。


「寂しい、な……」


眠りながら、義勇は小さく呟いた。

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