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言の葉の裏【鬼滅の刃】冨岡義勇

第20章 愛の囁き※


誰かと共に湯船に浸かったのはいつ振りだろう。琴音は不意に思い出してしまった。

『よし』
『お兄ちゃん、拭き拭きありがと』
『うん。部屋で着替えような』
『抱っこ』
『えー、歩けるだろ?』
『やだ、抱っこ』
『仕方無いな』

琴音の目に涙が溜まる。

大きな手で髪を洗ってくれた。
湯船で遊んでくれた。

大好きだった、兄。


『そら、水鉄砲だ!』
『きゃははは!琴音もやる!』
『手でこうして…、ここからピュッて』
『できないー!!』

『こら!二人共!遊んでないで早く出なさい!』

『……怒られた』
『怒られたな。早く出よう』


……なんで、こんなのが巡るの


急に黙った琴音の様子を見て、目の前の義勇が驚いているのがわかる。

似てないのに。
ちっとも似てないのに。
どうしてこの人と重なるの。


琴音は涙を隠すように俯いた。

義勇は少し戸惑いながら、その手を掴んで引き寄せる。

「どうした」
「……………」
「琴音」
「……………」

義勇は琴音と目を合わせて、言えと促す。

「……義勇さんは、」
「?」
「お姉ちゃんとお風呂入ってた?」
「………は?」
「小さい頃」

お姉ちゃん、を若干嫌らしい意味に捉えてしまった義勇は一瞬焦るが、実姉のことだとわかってほっとした。

「……たまに」

いや、これはこれで恥ずかしいなと義勇は思った。少しバツの悪そうな顔をしたが、琴音はそんな義勇を全く見ていなかった。


「私もね、お兄ちゃんと入ってたの。凄く久し振りに人と一緒に入ったから、思い出しちゃって」

義勇は合点がいった。

「そうか」

義勇は琴音を抱き上げた。

「今度また一緒に入るぞ」
「もう子どもじゃないもん」
「子どもじゃないからだ」
「………助平」

大人しく義勇の腕に抱かれる琴音。
この歳になってもしょっちゅう抱っこされているなと思った。

「手で水鉄砲、出来る?」
「…………出来ない」
「ふふ、不器用だもんね」
「悪かったな」

ムスッとする義勇。

義勇は琴音の部屋に彼女を下ろして布団を敷いた。

「……今日も一緒に寝るの?」
「そうだが」
「…………」
「慣れろ」

目を逸らす琴音を見て、可愛いなぁと義勇は思った。


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