第20章 愛の囁き※
「無理をさせて、悪かった」
義勇が小さな声で呟いた。
「駄目だとわかっていても、俺は、お前のことになると歯止めが効かない時がある」
「義勇さん……」
「こんなことは今までなかったのに」
「…………」
「大事にしたいといつも思っているのだが」
「…………」
「嫌な思いをさせてたら、すまない」
琴音の背中越しに、ぽつりぽつりと語られる義勇の思い。
「義勇さん、私も柱だよ」
「……?」
「力でねじ伏せられたらそりゃあなたには敵わないけど、嫌だったらなんとかして抜け出すよ」
「………まあな」
「即効性の痺れ薬や睡眠剤だって持ってる」
「…………」
「危険を感じたら迷わず使うよ。私が抱かれたってことは、嫌じゃないってこと。だって、義勇さんのこと大好きだもん」
「……琴音」
「確かにさっきはちょっと力が抜けちゃって驚いたけどね。慣れれば大丈夫なのかな。わかんないや」
「…………」
「義勇さんもびっくりしちゃったよね、ごめんね。鍛錬でへばってもあんな風にならないのにな……鍛えが足らないのかな」
うーんと首をひねって考え始める琴音を、義勇は後ろからぎゅっと抱きしめた。
「嫌じゃないなら……また、抱かれてくれるか」
「もちろん。でも日を改めてお願いします」
「…………」
「ちょ、ちょっと…、え……」
背中に硬いものが当たって琴音が焦る。
「嘘……でしょ」
「可愛いこと言うから」
「や!無理!今日はもう無理っ!」
琴音は力の入らない体で、バチャバチャと暴れ出す。
「わかってる」
「え?」
「もうしない、大丈夫だ」
「わかってるならなんでこうなってんのよ」
「仕方のないこともある」
「……意外と助平なのね」
義勇は琴音を抱き上げて風呂から上がる。
脱衣所で身体を拭いてやり、布で身体を巻いてやった。
力が入らないので、恥ずかしくはあるもののされるがままにお世話をしてもらう琴音。
布を琴音の腰元で止めた義勇が、彼女を見上げ「よし」と言った時、琴音はハッとして目を見開いた。
「? どうした」
「な…んでもない」
「??」
琴音は義勇から目を逸らした。