第20章 愛の囁き※
「風呂だ」
恥ずかしさを断ち切るように義勇は琴音を抱き上げた。
「俺が全部洗う。お前は何もしなくていい」
「え、や……、でも」
「寝ててもいい」
「……寝れないよ」
義勇は琴音を連れて風呂へと向かい、洗い場に琴音を下ろした。石鹸を泡立てて優しく身体を洗っていく。
胸周りやお腹周りを触られると、琴音が身体をくねらせた。
「ひゃん…っ」
「………おい」
「だっ…て、んっ、」
「妙な声を出すな」
「義勇さんが、触る、からっ…やっ……」
「こら、じっとしてろ」
琴音は力の入らない身体でイヤイヤと身をよじった。
「自分で、洗うっ!」
「どうやって」
「う……頑張って洗う!」
義勇は呆れながら手を離す。確かにこれ以上触っているとまずい気がする。若い男の精など、少しの刺激で瞬く間に復活してしまうからだ。できるだけ彼女を見ないようにして、自分の身体を洗い始めた。
琴音は片手で自分の身体を支えながら、反対の手で義勇の付けた泡を使ってお腹を擦り洗う。胸や秘所も洗って、一度流そうと手桶を持とうとする。が、全然持ち上がらない。
そんな様子を見て、義勇が手桶のお湯をかけてやった。
「あったかい」
琴音が柔らかく笑う。
義勇は湯船からまたお湯を汲んで、肩からかけてやった。自分の体にもお湯をかけて泡を流す。
「ありがと」
片腕で胸元を隠しながらお礼を言う琴音を、義勇はひょいと持ち上げた。驚いた顔をする琴音を抱えて一緒に湯船に入った。
「わ!ちょっと!」
慌てる琴音を後ろから抱え込む義勇。
「義勇さん?!」
「暴れるな。暖まれ」
「う…、うん」
「体、痛いんだろう」
「大したことないよ」
「駄目だ」
琴音は義勇の足の間にちょこんと座って、赤い顔をして俯く。
二人はしばし無言で湯に浸かる。