第1章 同期
夜月琴音。歳はまだ十一。
子どもが選別を受けにくることは珍しくない鬼殺隊。しかしなぜ、年上の候補生たちがバタバタと倒れていく中、この子がただ一人生き残ったのか。
彼女の介抱をしているのは新米隊士、村田。彼らの期は沢山の合格者が出たため翌年は選別が行われず、二年ぶりの選別が今回だった。
つまり、村田たちにとって琴音は初めての後輩となる。
村田が眠る少女をじっと見ていると、静かに襖が空いた。彼の同期、竹内が顔を出す。村田とは違い、堅めのツンツンとした髪型をしている。
「どうだ」
「傷は縫ってもらったから出血は止まってるみたいだ。まあ、女だからあんまり確認できないけど」
「女っつっても、子どもだろ」
「でも、傷は腕と腹だぞ。……んじゃ、お前が布団めくって確認しろよ!俺は無理」
「どれどれ」
竹内はひょいと布団をめくり、琴音の着物も捲る。
「うわ!おいっ!」
「るせーな、静かにしろよ。……んー、確かに出血は止まってるみたいだな。うわぁ…痛そうだな……」
素知らぬ顔で包帯でぐるぐるの琴音の身体を確認する竹内。村田は冷や汗だらだらである。
「おまっ、まじかよ……凄いな」
「俺、妹いたからな。ガキの身体なんてなんとも思わねえよ。ほら、まだ胸もぺったんこだぞ。はは」
「…………」
状態を確認すると、竹内は琴音の着物をきちんと整えて、また布団を被せてやった。村田は口をとがらせながら琴音を見ないように目をそらしている。
「医者はなんて?」
「失血と疲労と睡眠不足で眠ってるんだって。命には別状ないそうだ」
「そうか。報告してくるわ」
「おう」
竹内は静かに部屋を出ていった。