第19章 死なせない
義勇が風呂に入っている間に琴音は晩御飯の準備をした。温めて、盛り付ける。
煮物の味見をして美味しいと思うものの、やはり不安は拭い去れない。
少しの緊張を纏って、義勇の部屋へと運んだ。
久しぶりに共に食事をとる。
義勇は相変わらずすました顔で黙って食べる。琴音もここ最近は、アオイに申し訳ないと思いながら胃に栄養を流し込むだけの食事をしていたので、なんとなく無言で食べる。
義勇が一度箸を置き、お茶を飲んだ。
「………煮物」
「え?」
美味しくなかったかなと焦る琴音。
「いつもと味が違う」
「あ、うん。……私が作ったから」
「お前が?」
「うん」
琴音は不安そうな顔で義勇を見た。
「美味い」
「本当?」
義勇はこくりと頷いた。ほっとする琴音。義勇はまた食べ始めて、全部食べてくれた。
「料理、上手いな」
「普通だよ」
「美味かった」
「ありがとう」
褒められたことを単純に嬉しく思う。
「また作ってくれたら、嬉しい」
「こんなのでよければいつでも」
「…………」
「ん?」
「あまり、家に居てくれないから」
「それは……、ごめんね?」
「……仕方ないとわかってはいる」
拗ねるように目を逸らす義勇。
琴音は食器を重ねて義勇の頭を撫でた。
「また作るよ。何が食べたいか教えて」
「鮭大根」
「言うと思った!」
食器を持って立ち上がる琴音。
「片付け終わったらお茶入れて持ってくるね」
声をかけて部屋から出ていった。
琴音が居なくなると途端に寂しくなる義勇。台所に顔を出すと「お部屋で待っててよ!」と言われた。それでもお構い無しに皿を洗う琴音の首に巻き付いた。
「もー!」
「暇だ」
洗いにくいが、仕方なくそのままで片付けをしていく。
「そんなにくっついてると、お茶と間違えて麺つゆ出すよ?」
少し意地悪風にそう言うと、義勇の腕がぴくりと反応した。
「……………」
「義勇さんもうっかりするんだねー」
「帰ってこないお前が悪い」
「はいはい、ごめんなさいね」
クスクス笑う琴音に、ムスッとする義勇。
不機嫌になりながらも、義勇は絡めた手を離さなかった。